101話 真の覚醒。
101話 真の覚醒。
「何年、積み重ねてきた?」
自分に問いかけるセン。
「……5年? 10年? 100年? 1000年? 1万年? 10万年? 100万年? 1000万年? 1億年? 10億年? 100億年? ……違うだろ? 俺が、狂気に猟奇を重ねてきた時間は……その価値は……そんなもんじゃねぇよなぁ?!」
田中の攻撃が、センの顔面を砕こうとした――が、
しかし、その直前で、田中の拳はとまった。
センエースを包み込んでいるオーラが、理解できないレベルで堅牢になった。
覚醒を邪魔させない無敵バリア。
世界が、センエースの沸騰を見つめている。
主人公補正などとは呼ばせない。
これは、そんな『薄っぺらい哲学』じゃない。
とことんまで煮詰めた底意地というワガママ。
「……繰り返してきた……繰り返して、繰り返して、繰り返して……繰り返してきた。ただ、ひたすらに……愚かに……ぶざまに……そんな俺の全部が……天才に壊されて終わり? はは……」
一度、こみあげてきた笑みに身を任せてから、
センは、
「――俺はヒーローじゃない」
あらためて、自分自身と向き合う。
そうしなければ届かない何かを求めて、
センエースは、
「だからこそ叫べるありったけを……」
自分の全部と向き合っていく。
その結果、見つけた、自分の奥にあるもの。
「――ヒーロー見参――」
この地獄が始まってから、いったい、何度、その言葉を口にしただろう。
――結局のところ、それはただの言葉。
特別な質量なんて持つはずがなかった、ただの振動。
空気が震えただけの話。
けれど、
でも、
――とても大事なものだと思えた。
多分、錯覚。
それでいい。
むしろ、それがイイ。
恐怖も苦悩も絶望も、
全部飲み込んで、
別の何かに昇華させるの。
そうやって紡いできた命の膨張に、
油でも垂らして、火をつけたら、
少しは、何かの道標になったりしないかな。
そんなことを想いながら、今日を積む。
そんなことを想いながら積んできた一日一日を、
……集めて……
「……すぅう」
息を吸う。
酸素がめぐる。
――さあ。
さあ、歌おう。
歌おうじゃないか。
ぶっ壊れて、歪んで、腐って、
けれど、それでも、なくさなかったものがあると信じて。
冷たい孤独という血だまりが枯れるまで。
朧げな杯を献じながら。
無限の希望を背負い舞う閃光のうたを。
「――真醒・究極超神化――」
センエースの可能性をブースターにして、
ハスターの中の可能性が暴走を起こす。
センは、
「……」
自分の肉体に起った進化に、涙を流した。
「……あ、危ねぇ……はぁああ……」
覚醒後は、大体、万能感や全能感に包まれるものだが、今回の場合は安堵感しかなかった。
あとほんの数秒、覚醒が遅れていたら、配下の誰かが死んでいたかもしれない。
もし、誰かが死んでいたら、自分はどうしていただろう。
過ぎ去った恐怖を思い出し身震い。
恐怖体験は、直面している時よりも、後からおもいだした時の方が怖い場合が、往々にしてある。
――ちなみに、そんなふうに、心底からホッと息をついている間も、オートマ田中の攻撃は続いていた。
機械的に、無感情に、凶悪なパワーとスピードを振り回す田中の連打を、
センは、
――スルスルと、しなやかにかわしてから、
「閃拳」
的確な一撃を、田中の顎にぶちかます。
ワンパンで砕ける田中の顎。




