９１話 『ＨＰを０にしたら殺せる』と、いつから錯覚していた？
９１話 『ＨＰを０にしたら殺せる』と、いつから錯覚していた？
「さあ、ここから、大変だぞ、お前ら……裏スペシャル『人間失格』が、これまで以上に、俺を穢していくのを感じる……『俺を殺す』のは『殺虫スプレー一本で、地球上からゴキブリを完全に殲滅する』ぐらいしんどいぞ……くくく……つまりは、不可能だ」
細切れになったセンは、細切れになったまま、どこぞの、赤っ鼻みたいに、バラバラの肉体を自在に操って、『最後のあがき』を継続する。
別に、それで、闘えるかというと、別にそうではない。
ただ、必死に、逃げまどっているだけ。
その様を見た平熱マンが、首をかしげて、
「おかしいですね。あなたの生命力は間違いなく０になったはずなのですが」
などとほざいたので、
千両道化のセンは、
「――『ＨＰを０にしたら殺せる』と、いつから錯覚していた？！」
と、かなり狂ったことを叫ぶ。
「ＨＰが０になっても死なない程度のバグなんざ、別に珍しくもねぇ。出来の悪い現場では頻繁に起こり得る、安いエラーにすぎねぇ。その程度の『質の低いポカ』が、たまたま、今、俺の身に起こっただけの話」
理不尽を叫びながら、
センは、必死になって、死なないように立ち回る。
「……『この程度の安いバグ』を使ってくるチーターなんざ、敵として、いくらでも出てくるぞ！ 死なない程度のザコぐらい、秒で殺せねぇと、世界の守り手は騙れねぇ！ 俺を殺してみろよ、優等生ども！ 命の希望ともあろう者たちが、俺ごときに躓くな！」
ボコボコにされながらも、しかし、全然死なないセンは、
さらに続けて、
「カンツぅ！ 俺を生かそうだなんて、ヌルいことを言っていたら、ガチで世界は終わるぞぉ！ てめぇは、どっちを選ぶ！ 俺か、世界か！ どっちもはなしだ！ てめぇに、そんな『ぶっ飛びのジンテーゼ』を選べるだけの力はねぇ！ その地獄は、『俺一人すら殺せないやつ』に叫べる勇気じゃねぇんだよ！ ちょっと何言っているか、わかんないって？ 安心しろ！ 俺もだぁああああ！ 俺が何言っているか、ちょっとわかんねぇええ！」
延々に、不条理と不合理を、叫び続けるセン。
とにもかくにも逃げまわる。
その間、何度も、何度も致命のダメージを受け続ける。
しかし、それでも、センは死なない。
極端に狂ったゾンビピエロで在り続ける。
「ぐふ……」
とはいえ、無限ではない。
何度も、何度も、何度も『致死量のダメージ』を受け続けたことで、
ついに、
「……く、くく……ＨＰ０になってから、三日稼げたか……できれば、もうちょい稼ぎたかったが……まあ、三日もつなら、ノルマは十分に越えている……」
絶命に届いたセン。
息を引き取っても、
しかし、すぐに、
「はい、復活ぅぅ！ 完全復活ぅ！ ＨＰは３０％しかないが、けど、そんなもん、関係ねぇええ！ ＨＰなんて飾りです！ 偉い人にはそれがわからんのです！」
と、中身のない言葉で世界をケムに巻きつつ、
センは、終わらない地獄に身を投じる。
センエースは抗い続ける。
狂ったように、バグったように、
必死になって、命と向き合い続ける。
