88話 絶対に嫌だ。
88話 絶対に嫌だ。
「うぅ……くぅう……ぐぬぅううう……」
あまりの怒りで、血圧が爆発寸前。
顔真っ赤で、あらゆる箇所の毛細血管がブチブチと音をたててちぎれる。
(積んだぁあああああああ……っっ)
頭の中がまっしろになる。
考えようとしても『これはだめかもわからんね』『オワタ』というテンプレだけが頭の中を埋め尽くす。
「うぅうう……ぅううう……」
最悪の未来が、頭の中を埋め尽くす。
(死ぬ……死ぬ……こいつらが……俺の、大事なもんが……全部……壊れる……嫌だ……いやだ……)
ギリギリと、へし折れないのがおかしいほどに強く歯を食いしばってから、
「絶対に嫌だぁああああああああああああああああああああ!!」
喉がちぎれるほど叫び、
センは、時空を駆け抜ける。
とにかく、生命維持に全振りした一手。
戦闘はいったん放棄して、とにかく、攻撃を回避することだけに専念する。
(絶対に死なせない! 誰一人ぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!)
『これだけ守りたいと思っている配下たち』から、
センは、今、憎まれ、恨まれ、殺されかけている。
田中の魔法で元気になった38人は、
センエースを殺そうと全力を尽くしている。
徹底的に、センへと圧力をかけていく。
彼・彼女らの、センに対する『純粋な殺意と憎悪』は、10万回ボーナス時に底上げされているため、センがいくらボロボロでも、手を止めようとはしない。
まあ、『殺してもその場で復活するから』というのも大きな理由だが。
とにかく、38人の配下たちは、徹底的にセンを殺そうと全力を尽くしている。
そんな中、センは逃げ回り、
そして、
「……ぐっ……」
殺される。
まあ、まだ残機は大量に残っているので、
普通に復活するわけだが、
(……最大値の40パーセントを切った……)
復活した際の体力は、半分を余裕で下回る。
おそらく、次、復活した時は、30%を切るだろう。
(……体力全開状態のこいつら相手に、体力30%で稼げる時間は……おそらく、5日が限度……仮に、10パーセン以下になったら……1日ちょっとが限度……もし、コンマ1%になったら……どうする……3時間ちょいで殺されるんじゃないか……)
地獄の未来予想図だけが、頭の中で、どんどん鮮明になっていく。
(いつしか、一日に10回殺されるようになり……そのたび体力が減って、さらに、一日に20回、30回と殺されるようになって……一か月で1000回ぐらい死んで……二か月後にドボン……っ……)
その不安は、決して、疑心暗鬼や偏執病の類ではない。
――このノイローゼは、このままだと、確実に起こる未来。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ」
粗い呼吸が、より粗雑になっていく。
『追い詰められている』ということが、誰の目にも明らかな様子。
集中している呼吸ではなく、ただただ、恐怖と不安からくる呼吸困難。
そんなセンに、カンツが、
「もう、終わりだろう! そこらでやめておけ! このままだと、いずれ、底をつきるのは見えている! 無駄に殺されるのは、もういいだろう!」
と、この期に及んで、まだ、そんなことを叫ぶ。




