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29話 弟子を育てるという道。


 29話 弟子を育てるという道。



『弟子の戦闘力評価が一定に達した――条件達成。【作成できる弟子の数が3人に増加】した』



「マジか……え、どうしよう……また最初から50万年は……ちょっと、しんどいかなぁ……」


 などと、普通に、そんなことを思ったが、


(二人同時に鍛えつつ、ジャミのことも磨いていく……それはそれで、また別の訓練になるか……)


 そう思ったセンは、

 3人同時の育成を開始しようかと意気込んだが、


「……あ、そうか……作成するところからか……」


 一人につき10年なので、

 合計20年は必要。


 またセンは、途方もなく長い『一日・一日』を積み重ねていく。




 ★




「――よし……完成。お前の名前はサトロワスだ」


「ジャミ、パメラノ、お前らの新しい兄弟だ。仲良くしてやってくれ」


 呼びかけても返事はしない。

 うなずくこともない。


 だが、センは、それでも、彼らに話しかけることをやめない。


 あるいは、センは――『語りかけること』が、親の役目である――なんて、そんなことを考えていたりするのかもしれない。

 この辺は、セン自身が自覚していない領域。

 ジャミたちに対して『どう接するのが正解』なのか、説明書には書かれていない。


 子育てにおいて、何が正解で、何が不正解か、そんなことは知らない。

 図書館で本を読んだが、こんなもん、本を読んだからといって分かる話ではない。

 実戦で骨身を削る事でしか、本物の経験値は稼げない。


 だから、センは、無意識のまま、

 モノ言わぬ人形的な彼らに対し、

 『持ち前の病的な誠実さ』を貫いたのだろう。



 第一の弟子、ジャミ・ラストローズ・B・アトラー(見た目、若いイケメン)、

 第二の弟子、パメラノ・コット・N・ロッド(見た目、小柄な老婆)、

 第三の弟子、サトロワス(見た目、細マッチョの夏目漱石)。



 センは、三人の弟子に対し、均等に、愛を注いだ。

 『創造主の責任』を果たそうと、センなりに、精一杯の愛を注ぐ。


 ジャミたちが、『センの想い』を理解してくれているかどうか、そんなことは、セン的に、どうでもいいことだった。


「しょせんは、エゴの連鎖。手前勝手に命を創造し、望むがままに磨き上げていく……これは、愛情ではない……では、愛情とはなんだ……」


 手探りで答えを探そうとする。

 求めた分だけ遠ざかっていく気がする。


「手本にならなければいけない――その意識が、俺の中で器になっていく……」


 3人相手の訓練を続けているうちに、

 センは、『今』を理解していく。


「こいつらは、俺の背中をうつす鏡……俺が小さくまとまったら、こいつらの可能性も矮小に縮こまる……」


 『道』が見えてくる。

 これまで見えていなかった道。

 視野が広くなったわけじゃない。

 『これまでは見ようとしていなかった部分』を意識するようになっただけ。


「お前たちは人形じゃない……俺には分かる。他のヤツの目には、もの言わぬ人形にしか見えないかもしれない。けど、親である俺には分かるんだ……お前らの命は、激しいほどに輝いている……」


 一度も会話したことがない子供たちと向き合う時間が過ぎていく。


「お前たちの目は、ちゃんと俺を捉えている。……となれば、俺は、お前らの前で、『みじめな無様さ』をさらすことはできない。多少、チョケるぐらいは勘弁してもらいたいが、マジの醜態は絶対にさらせねぇ」


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― 新着の感想 ―
途方もない時間を前にしんどいかなぁ、 と正直に思う描写がある一方で、 弟子の命の輝きを見抜く親、 としてのまなざしに胸を打たれます。
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