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73話 秒速チェンジ。


 73話 秒速チェンジ。


「やかぁしぃわ、ボケ。耳元で叫ぶな、カスぅ」


「カスもボケもテメェだぁ! アホの一つ覚えで、何度も何度も何度も何度も何度も何度も同じこと言いやがってぇ!!」


「……『さっき言おうとしたセリフ』は、『お前が折れそうになった時だけ言おう』と決めとったセリフで、お前が折れそうな時以外で言うつもりがなかったんやけど。それを何度も聞いとるってことは、お前、よっぽど、この1000万回の間に折れかけまくったんやな」


「折れるに決まってんだろ! どんだけしんどいと思ってんだ! もう、ちょっと、マジで、お前、やってみろ! どんだけ苦しいか、一回代わって経験しろ! で、折れなかったら、もうお前が主役でいいから! てか、代わって耐えてくれ! 頼むから、主役をやってくれ! 頼むからぁあああああああああ!!」


「代打は無理やな。なぜならこれは、お前にしか出来ん不可能やから」


「そんなもんない! 俺ごときにできることは誰にでもできる! お前なら特にできる! お前は天才だから!!」


「……」


「マジのマジでかわってくれ。ちょっと、ガチに、辛いから……本当に、マジで」


 と、ガチで泣き言を吐くセン。


「逃げることもできず、死ぬこともできない。ひたすら、大事な奴らに殺され続けるしかない。こんな地獄、ヒド過ぎるだろ。なぁ、田中。俺、そんなわるいことしたか? 世界を守るために、身を削って頑張ってきた記憶しかないんだが……気づかない間に、俺はどこかで、とんでもなく悪いことをしたのか? ――『世界で一番、精力的に犯罪を繰り返し続けた史上最凶のキ〇ガイ犯罪者』でも、ここまでの罰は経験しないと思うんだが。なぁ、田中……なぁっ!!」


「……」


 慟哭が止まらないセンを前に、

 田中は、


「わかった。ここから先はワシが引き継ぐ。だいぶ、経験値効率が下がるけど……しゃーないな……」


 そう言ってから、センの胸部に手を当てる。


「もらうぞ。死銀の鍵と、お前が貯めてきたもん全部」


 パァァァ、と淡い光がまたたいた。

 と思った直後、センの中は、自分の中から何か大事なものが、ゴソっとなくなっていくのを感じた。


 今、センが失ったものは、数値とかアイテムとか、それだけではない。

 もっと大事なものも一緒になくしてしまった。


 とてつもなく重たい喪失感と、言葉にできない焦燥感。

 もっと直球で言うと、罪悪感。


 そんな複雑極まりない感情に包まれているセンの視線の先で、田中は、軽く準備運動をして、


「さて、と。それじゃあ、ゼノリカと殺し合ってくるか――」


 と、つぶやいた。


 ――その直後のことだった。






 ……急に、田中の顔が真っ青になる。






「ん? どうした?」


 その質問に答えず、

 田中は、


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 と、急に息を切らして、

 その場にへたりこむ。


「何事だよ。急に、どうした……」


「む、むりや……」


「は? なにが?」


「今回で600回目……もう……身体が持たん。メンタルも限界や。これ以上は無理」


「ぇ……ぁ、も、もしかして……今の、この瞬間が、お前にとっての『死銀の鍵のセーブポイント』なのか?」


 田中はうんともノーとも言わない。

 その質問に返事をするのは、飽き飽きしている、とでも言いたげな表情。


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