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68話 いつまでも続く地獄。


 68話 いつまでも続く地獄。


永遠童貞ゆえに、子供を残せなかったセンは、養子や弟子のことを、『我が子』のように思っている節がなくもない。

山ほどいる『我が子』の中でも、センは、特に、平熱マンのことをかわいがっているところがなくもない。


別に、『わが子』に対する『愛情度』に順位をつけているわけではないので、確定的に一番かと言われれば、それもまた違うと言わざるをえないが、『真面目で、努力家』な弟子のことは、やはり、かわいいと思ってしまうもの。

『天才』に対しては嫉妬心が常にハンパないセンさんだが、

『我が子』の『天才ぶり』に関しては、素直に喜べるところがなくもなかった。


ごちゃごちゃダラダラと、『うっとうしい前提』を並べてきたが、

何が言いたいかといえば、実のところ、たった一つ。


センは、平熱マンのことを、『目に入れたら痛いけど、目にいれないと平が死ぬという前提でもあるなら、一瞬の躊躇もせずにいれてみせよう』と思うぐらいには愛している。

そんな愛する我が子から、何度も何度も殺されたことで、センエースの心の闇がどんどん深くなっていく。


 センエースの苦難は続く。

 ゴールはまだまだ見えない。



 ★



――記念すべき5万回目のループを終えたとき、

センの目は完全に死んでいた。


「……だいぶ、メンタルがヤバそうやな……まだ、いけそうか?」


自室で、黙々と経験値ふりをしているセンに、

田中はそう声をかけた。


センは、うつろな目をエアウインドウにクギ付けにしたまま、


「いけるわけねぇだろ、カスが。いけるかいけないかでいえば、もう何万回も前から、ずっといけてねぇんだよ。俺と同じ状況になっていて、それでも『はい、いけます』とか元気いっぱいで叫べるやつが、もしいるなら、ここまでつれてこい。ツバ吐きかけた上で、脳天を全力でシバきあげてやるから。そいつは人間じゃねぇ。人権がねぇ。人権がねぇってことは、何してもいいってことだ。人権こそパワー。……ところで、俺に人権ってある? たぶん、ないよね? あったら、こんな目に合ってないもんね? 俺、どこで、人権なくしたのかな? 落とした記憶ないんだけどなぁ……もしかして、最初からもってない? あー、だったら、納得だぁ」


 まったく中身のない言葉が止まらない。

 すでに、散々、からっぽの言葉を吐いたが、しかし、センは、まだ止まらない。


「ごらんのとおり、俺の心は完全に詰んでいる。その程度のこと、見てわかれ、クソが。どんだけ頭悪いんだ。もう、ほんと、世の中、クソだな。お前みたいなカスをあがめたてるこの世界が、俺は大嫌いだ。滅ぶべき。今すぐに滅ぶべき」


ぶつぶつ、だらだら、ぐちぐち、ブチブチと、愚痴が止まらない。

もはや、経験値振りは脳死でもこなせるようになっているようで、

口では全方位を敵にまわす愚痴をこぼしつつも経験値振りは完璧、

という、無駄に洗練された無駄のない無駄なマルチタスクを遂行。


「いつまで続くんだよ、この地獄、クソが、クソが、クソが」


 文句を言いながらも、決して手をとめないセンエース。

 そんな彼の背中から、田中は決して目をそらさない。



 ★



 記念すべき10万回目のループを達成した時、

 田中が、


「ぱんぱかぱーん。10万回目ボーナスとして、配下全員の『センエースに対する憎悪と殺意』が爆裂に底上げされましたぁ! やったね、センちゃん。随分と殺されやすくなったよ」


「……」


「みんな、お前のことが、嫌いで嫌いで仕方がない。生理的に無理。という状況に、精神性がカスタムされた。もう、無駄に煽らなくても、あいつらは、嬉々として、お前を殺してくれるだろう。あいつらの視点だと、お前は、ゴキブリの中でも、特に嫌われているタイプのエリートゴキブリだ」


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