28話 神闘と現闘。
28話 神闘と現闘。
弟子を育成するのは、非常に困難な道だった。
まず、弟子は最初、何も出来ない。
自分で歩くことさえ出来ないというお粗末さ。
まるで、赤子のよう。
だから、最初は、マジの手取り足取り。
まともに『動く』ということができるようになるだけでも数年を要した。
最初は『ダルすぎる』と思っていたが、だんだん、
(俺自身の、気付かなかった『無駄』も……見えてきた……)
『体を動かす』という『無意識に出来る行為』の『奥』に潜んでいた贅肉と向き合う。
不必要な部分を削いでいくと、無駄な重さがどんどん消えていく。
ジャミを鍛えていく過程で、明らかにセンも磨かれている。
(……ナイトメアソウルゲートの施設は、本当に、よくできている……おかげで、無能な俺でも最強に近づける……)
センは、徹底的にジャミを鍛えていった。
ジャミがまともに動けるようになってからは、
『闘い方』を一から教えていった。
『闘い』には2種類ある。
『神の力』を使わない現世の戦闘術『現闘』と、
『神の力』をフルでつかう武の神業『神闘』の二つ。
『神の力』とは、魔法やシステムだけのことを指すのではなく、
『神の知識』や『神のシステム』など、ありとあらゆる『高次概念』全般のこと。
いきなり『難易度が高い神闘』を教え込むのは無理があるので、
まずは、現闘を叩き込んだ。
ジャミに現闘を教え込む中で、センは気づく。
(現闘は、完全にマスターしたと思っていたが……ここにも無駄な贅肉が山ほどあった……)
最初の1億年の段階で、センは『武の真髄』を得たと認識していた。
それは、すなわち、現闘は、完全にマスターしたという高次理解。
だが、それは恥ずかしい勘違いでしかなかった。
センはまだ、何も理解していなかった。
「俺も、拳の握り方からやり直す必要があるかもな……」
自嘲気味に、そうつぶやく。
『弟子を育成するという過程』を経ることで、
センは、どんどん、磨かれていく。
もちろん、ジャミもどんどん磨かれていく。
最初は、動くこともやっとだったのに、
1000年が経った今となっては、
すでに、『現闘という概念のシルエット』を掴みかけていた。
「ジャミ、だいぶ前から思っていたんだが、今、確信した。お前は、俺より才能がある」
『武の才能』というものを、仮に数値化した場合、
センは1で、ジャミは10ぐらいあった。
「……だが、勘違いはするな。お前が凄いんじゃない。俺がヤバいんだ。……なんか……泣きたくなってきたな」
センはさらに訓練を繰り返した。
1万年、
5万年、
10万年、
20万年、
50万年、
……繰り返して、繰り返して、繰り返して……
その結果、
「……ようやく、神闘に、片足を突っ込むことに成功したな……ジャミ」
返事はない、表情に変化もない。
しかし、どこか誇らしげに見えなくもない――なんてことを、センは思った。
すると、そこで、
『弟子の戦闘力評価が一定に達した――条件達成。【作成できる弟子の数が3人に増加】した』




