65話 センエースの心境。
65話 センエースの心境。
「ボーナスタイムだ。今回獲得した経験値を割り振っていけ」
「……わかっているよ」
「今回からは、平熱マンたちの分も振っていくことになるからな」
「だから、わかっているって。うるさいな」
――しばらく作業を続けていると、
ハスターが、背後から近づいてきて、
「……センエース、契約の時間だ」
と、前置きもなく、そう言った。
そんなハスターに、センは反射で、
「喋っているヒマはない。今回で10000回目。それで全部察しろ。以上」
無感情に、そう言って、黙々と作業を続ける。
『対話する気はない』という明確な意志を向けられたハスターは、
「……1万回……ということは……ゾメガたちが既に参戦している感じか」
と、センに確認するわけではなく、理解できている『状況の整理』だけに努める。
ハスターは、センに声をかけることはなく、
自分の両手をにぎにぎしながら、
「……10000回目にしては強くなりすぎている気がするな……どうやら、よっぽど、配下に殺されるのが辛いとみえる」
などとブツブツ言っているハスターのことをシカトして、
センは、ひたすらに、えんえんと、作業に没頭する。
――途中で、いつもと同じ流れで、田中が入ってきて、
「タイムリープ、どうやった? うまいこと、いけた? いい感じに殺された?」
と、声をかけてきたので、
「今回で、10000回目のタイムリープ。あとは分かるな」
と、数字だけを雑にこたえつつ、
田中の数真とデータを連動させる。
その態度を見て、田中は、
「お、記念すべき1万回目か。……ふむ。今回は誰に殺されてループした? 三至が参戦しとるはずやから、トドメ役は、カンツやないよな?」
「……平」
「ああ、やっぱり、そうか。やっぱ、殺されるとしたら、タイマン性能最強に殺されるわな。で、どうやった? 感想は? ほとんど息子同然と言ってもいいカワイイ愛弟子に、本気の殺意を向けられて、無残に殺された感想は? 何か言いたいことがあったら聞くで。今回限り、『ただの文句』でも、黙って聞いたる。まあ、いつも、ほとんど黙って聞いたってるけど」
などという田中の、それなりに配慮のある言葉に、
「……」
センは、何も返さなかった。
『疲れていて喋りたくない』というのもあるし、
『作業で忙しいから会話したくない』というのもあるが、
それ以外の『理由』もありそうだった。
しばらくの沈黙ののちに、
田中が、ボソっと、
「なんもないんか?」
と問いかけると、
センは、経験値振りの手をピタっと止めて、
一度、目を閉じて、何度か息を吸って、吐いてしてから、
「……シューリとアダムとミシャは、いつから参戦する?」
田中の配慮とは向き合わず、
まったく関係のない疑問符を投げかける。
田中の反応が返ってくる前に、センは、続けて、
「あの三女神のMAX存在値は、それぞれ10兆以上あるはず……近々(きんきん)で出てこられても、まともな戦いにならない。存在値に差がありすぎると、殺されるのが難しくなる。絶対に、カンツが邪魔をするから」




