64話 センエースの人間関係。
64話 センエースの人間関係。
センエースは、『人間関係』に対して、常に、『感情のブレーキレバー』に手をかけている感じ。
何かあれば、すぐにレバーを握りしめて急ブレーキをかけられるように、慎重に、周囲をうかがっている。
人間関係に対して臆病かと言われると、そういうわけではない。
そういうわけではない……と言いたいのだけれど、
つきつめて考えてみると、やはり、どうしても、
そう言う部分もなくはなくて……
けれど、それを、絶対に認めたくはなくて……
――孤高でいたいのは事実だけれど、
――祭りを外から眺めていたいのは事実だけれど、
――それだけじゃない部分も、確かに在った。
それを自覚したことで、センは、とことん渋い顔になる。
センは、平熱マンの頭をガシっと掴んで、
鼻が触れ合うほどの近距離で、
「ハリネズミのジレンマって知っているか?」
「急になんですか?」
「傷つくことを恐れて距離をとる……嫌いな概念だ。そういう臆病さには虫唾が走る」
「だから、なんですか?」
そう言いつつも、平は、センの腹部に剣をつきたてる。
センは、ごふっと、血をはいたが、しかし、平の頭から手を離さず、
「……『だから何』って……はっ……感情論の結論なんて、わかってたまるかよ。言語化したところで、そんなもんは、結局のところ、ただのハリボテ……言葉の不完全性を再認識するだけのマトリョーシカ」
「何が言いたいのか、本当に、さっぱりわかりませんね」
そう言いながら、
平は、何度も、何度も、センの腹部に剣をつきたてる。
ザシュ、ザシュと、内臓がぐちゃぐちゃになる音が脳内で響いている。
触れ合って、傷ついて、心が砕けていく。
それが、人間関係の本質。
意識が朦朧としてきたセンは、
(……俺が……折れたら……)
グっと、力強く、平熱マンを抱きしめながら、
(お前ら全員……死ぬんだってさ……)
心の中で、そう前を置いてから、
「勘弁してほしいぜ……まったく、よぉ……」
そう言いながら、
「……」
あえて無様に、
ニっと、
太陽にみたいに微笑んでみせる。
楽しくて笑ったんじゃない。
ただ、覚悟が膨らんだだけ。
『がははは』と笑ってみせるのと、方向性は同じ。
ただ、ステージが少々違うだけ。
どっちが上か下かの話じゃない。
どっちの方が歪んでいるかっていう、たったそれだけの、ほとほと惨めな話
「……ヒーロー……見参……」
最後に、力なく、けれど、芯のある声音でそう言ってから、
――センは絶命した。
★
「……」
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
「……」
特に意味もなく、部屋の一点を、ジっとにらみつける。
そこに何があるというわけではない。
ただ、視点がまっすぐになっているだけの話。
センは、
「……ふぅう」
と、簡素に息をついてから、
「……」
スっと目を閉じて瞑想。
心を整える。
自分と向き合う。
そんなことをしていると、
呼んでもいないのに、ヨグナイフが、勝手に、センの目の前に顕現して、
「ボーナスタイムだ。今回獲得した経験値を割り振っていけ」
「……わかっているよ」
「今回からは、平熱マンたちの分も振っていくことになるからな」
「だから、わかっているって。うるさいな」
反抗期の中学生みたいな返事をしつつ、
センは、経験値振りを開始した。




