59話 おろろろろろろろろ。
59話 おろろろろろろろろ。
「喜べ。今後、十席たちが、平とゾメガと、三姉妹と、九華を、召喚獣として、この戦いに呼べるようになる。あ、もちろん、超神化は出来るように調整しておいたから、役者不足ってことにはならんで。ほんまは、究極超神化状態になるよう調整したかったんやけど、色々とポイントがたりんくてなぁ。究極超神化に関しては、自力で覚醒してもらうことになった。ちなみに、お前に対する記憶は存在しない状態やから、お前を殺すことに、なんの躊躇もせんで。やったね、センちゃん。家族が総出で、殺しにくるよ」
その話を聞いたセンは、頭を抱えて、うずくまり、ボロボロと泣き始めた。
経験値を割り振らないといけないのに、
うずくまったまま、体が動かない。
『ここまで』で、既に十分、心はズタボロだった。
大事な家族に嫌われて、殺され続けるという絶望。
単純に、休むことなく仕事をし続けるという地獄。
十席に殺されるのも、十席全員を育てるのも、
とんでもない作業量で、
肉体的にも精神的にも、本当に辛かった。
――ここまででも、ハンパないぐらいキツかったというのに、
『ここから』は、肉体と精神にかかる負担が、倍ぐらいになる。
それがリアルに想像できたセンは、
「うぇええ……っ、おろろろろろろっ」
思わず、自室のベッドの上で、嘔吐してしまった。
これまでのループでも、何度か、こっそり泣いてきたが、嘔吐したのは初めてだった。
視界がグルグルとまわって、今にも失神しそう。
――そんなセンの、あまりにも悲痛な様子に、
田中は、
「もう、この段階で予告しとくけど、『10万回ボーナス』と、『100万回ボーナス』と、『1000万回ボーナス』もあるから。……ここまでいうたら、流石に予想できると思うけど、将来的には、アダム・ミシャ・シューリの三人も呼ぶ。お前を憎み、お前を殺すために召喚される」
と、傷口にガリガリと塩を塗り込んでいく。
「はぁあ……はぁあ……はぁああ……」
うつろな目で虚空を見つめながら、
センは、荒い息を吐きつつ、胸をかきむしる。
「……た……助けて……」
自然と、口をついて出た。
特に『誰か』に向けてのメッセージではない。
ただ、もう、本当に辛くて、だから『助けて欲しい』という切望がにじみ出た。
それだけの話。
そんな、ズタボロのセンに向かって、
田中は、
「ずっと、誰かの『救いを求める声』に応え続けたお前の『救援要請』に、誰も応えてくれんというところに、世の『破綻』を感じるなぁ。この世界は、どうしようもないほど残酷で、希望の余地がない。完全に終わっとる。バッドエンドしか残っていない地獄」
「……はぁ……はぁ……助けて……」
ボロボロと流れていく涙の量だけが増えていく。
センエースの悲痛の叫びに応えようとする者はいない。
田中は、
「誰もお前を助けてくれんのに、お前は全部を救わないかんのやなぁ……なんか、もう、アレやな……なんて言うたらええかわからんけど……まあ、その……大変やな」
皮肉とか、そういうことではなく、
ただ、純粋に、思ったことを口にする。
慰めるなんてことは出来ない。
『自分がやらせている地獄』なので、その資格はないと考えている。
同情するのはおかしいし、普通に『助ける』ということも出来ない。
田中は、黙って、センを見つめている。
センは、ずっと、苦しそうにうずくまって泣いている。
その様子を見ながら、田中は、
自分なら、どうなっていただろうか、とそんなことを考える。
「……これは、まあ、キツいやろうなぁ。ワシやったら、普通に無理やな……」




