58話 9999。
58話 9999。
――センエースは繰り返した。
繰り返して、繰り返して、繰り返して、
――繰り返し続けた。
『朝から晩まで作業ゲーをして、夜にはぐちゃぐちゃに殺される』という、もう、ほんと、地獄以上に地獄な毎日を、延々と、淡々と、ずっと、ずっと、バカみたいに、ひたすらに繰り返し続ける。
「……センエース、契約の時間だ」
と、前置きもなく、そう言ったハスターに、
センは、完全に、ただの反射で、
「今、9999回目。忙しいから、話しかけるな。以上」
早口で、無感情に、そう言った。
「……1万回目、目前か。よく頑張ったな」
ハスターのねぎらいの言葉など、センはまったく聞いていない。
死んだ目で、たんたんと作業をこなす。
その途中で、田中が入ってきて、
「タイムリープ、どうやった? うまいこと、いけた? いい感じに殺された?」
と、声をかけてきたので、
「今、9999回目。忙しいから、話しかけるな。以上」
と、徹底的にフラットなテンションでそう言ってから、
田中の数真とデータを連動させる。
その態度を見て、田中は、
「お、冗談やなく、ガチっぽいな。次で1万回か。OK、ほな、話があるから、ちょっと一旦、手をとめぇ」
「……」
センは、一瞬、『邪魔すんな』と叫びそうになったが、
田中が、こんなことを言い出したのは初だったので、
「やりながら聞くから、勝手にしゃべれ」
一応、マジで聞く気がある視線を送りながら、そう言うと、
田中が、
「次からは、『10000回目ループボーナス』で、隠しモードが解禁される。これまで以上に効率よく強くなれんで。やったね、センちゃん」
「……」
「ボーナスで、新モード解禁やぁ、いうてんのに、あんまり嬉しそうやないな。ゲームやったら、一番ワクワクするところちゃうんか」
「ゲームだったらな……」
と、しんどそうにそうつぶやいてから、
センは、作業する手をとめて、
田中を睨みつけ、
「で? 今度は、どんな残酷な地獄で俺をボコボコにするつもりなんだ、クソ野郎」
と、すっかり心がすさんでしまっている主人公に、
田中は、
ニィと、悪魔みたいな笑顔を浮かべて、
「喜べ。今後、十席たちが、平とゾメガと、三姉妹と、九華を、召喚獣として、この戦いに呼べるようになる。あ、もちろん、超神化は出来るように調整しておいたから、役者不足ってことにはならんで。ほんまは、究極超神化状態になるよう調整したかったんやけど、色々とポイントがたりんくてなぁ。究極超神化に関しては、自力で覚醒してもらうことになった。ちなみに、お前に対する記憶は存在しない状態やから、お前を殺すことに、なんの躊躇もせんで。やったね、センちゃん。家族が総出で、殺しにくるよ」
「……」
「もちろん、戦力として呼ぶだけやなくて、経験値を振り分けて、成長させることが可能。これで、ゼノリカはどんどん底上げされる。ゼノリカが底上げされるということは、お前が強くなるということ。やったね、センちゃん。『最強』にまた一歩、近づいたよ」
そんなことを言ってくる田中の目の前で、
センは、
「う、ぁ……ぁああ……あああ……」
頭を抱えて、うずくまり、
ボロボロと泣き始めた。
「あああ……あああああっ……」
心が砕けて、涙が止まらない。
田中の前で泣くなど、通常の精神状態ではありえないことだが、
もう、そんなことを言っていられる余裕はなかった。




