55話 未来のセンエースさんなら、なんとかしてくれる。知らんけど。
55話 未来のセンエースさんなら、なんとかしてくれる。知らんけど。
「セェエエエエンッッ!」
田中を殺そうとしているセンを止めようと突撃してきたカンツ。
カンツは、頭の中で、多少は悩んでいたようだったが、
しかし、最終的には、
「ぐふっ!!」
センの心臓部を貫いた。
それでも、動き続けるセン。
かたくなに、執拗に、田中を殺そうとしている姿を見て、
カンツは、
「ちぃいい!」
ひどくキツそうな顔で、
「馬鹿やろうぉおおおおお!」
右手にためたオーラを、
「異次元砲ぉおおお!!」
センに向かって放った。
死にゆく中でも、センは、
(……クマートゥやダリィは、脳筋アタッカーでいいけど……残飯マンと、ワイトマジェスの振り方がムズいな……ドナは大丈夫として、ジャクリナがちょっとムズ――)
ずっと、ずっと、考え続けていた。
『配下を少しでも強くして、命の王としての責務を果たそうとしている』――と見ることもできるのだが、『カンツに殺されるしんどさを、思考でかきけそうとしている』とみることもできた。
命は完成しない。
どこまでいっても、誰であろうと、脆さと弱さを払拭しきれない。
★
「――はっ……」
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
「……」
頭をぼりぼりとかきながら、
センは、
「ふぅうう」
と、長い息をはきつつ、
(……ジャクリナやカンパネルラみたいな、中衛の潤滑油タイプが、育成という点では、一番、タルいんだよなぁ……下手な調整をすると、機能しなくなる……)
『死ぬ直前の思考』を再開させた。
(中衛・後衛と違って、アストロギアやズシオーみたいな前衛は本当に楽。もう、なんも考えなくていいから。脳筋ブッパで証明終了だから。……もう、ほんと、前衛のビルド以外は、考えたくない。しんどすぎる。ルギルとカキマロとチーニュにいたっては……もう、ムズすぎて、脳が爆発するレベル。……んー、ほんと、ちょっと、処理するタスクが多すぎる。……んー……もう、ダメだ。無理だ。……前衛以外のガチ育成は、しばらく放置だな……まずは、前衛を仕上げて……そこから、後衛に着手していこう。うん。面倒な仕事は後回しだ。未来のセンエースさんにたくそう。未来のセンエースさんなら、きっとなんとかしてくれる。知らんけど)
などと、頭の中で考えていると、
そこで、
ヨグナイフが、勝手に、センの目の前に顕現して、
「さあ、ボーナスタイムだ。今回獲得した経験値を割り振っていけ」
「いちいち言われんでもわかってるよ」
「お前が分かっているということを、私も分かって言っている。これは、いわば同期であり、そして、ケジメでもある」
「ちょっと何言っているかわかんない」
「無駄なおしゃべりをしているヒマがあるなら、経験値の割り振りに着手した方がいいんじゃないのか? ダラダラしていると、今日中に終わらないぞ」
「……普通に考えて、今日中に終わる作業量じゃねぇんだよなぁ……だから、もう、未来の俺に後回ししようかなぁ、とか考えているけど、問題ないよな? うん、ないな」




