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41話 大事な記憶。


 41話 大事な記憶。


「……改竄しているんじゃない。覚えていないだけだ。夢って忘れるものだろ? 『お前と一緒に銀の鍵を使いまくった記憶』は、だいぶ薄れてきている。あの頃のことは、もはや、まったく覚えていない。確か、俺は……あの時のどっかのタイミングで、童貞じゃなくなった気がするんだが……間違っていないよな? な」


「貴様は今も童貞だし、そのことを、正式に憶えている」


「人の記憶を勝手に決めつけないでくれる?」


「では、忘れたのか? 本当に? 本当に薄れてきているのか? むしろ、鮮明になっているのでは?」


「……なんで、人の記憶に対して、そこまで理解度が高いんだよ」


「貴様と私は一つになっているようなものだから。隠し事など無意味」


「……はっ……あ、そう。そいつは、ずいぶんと、厄介な状況だな。やれやれだぜ」


 などと、主人公みたいなセリフを口にしてから、


「……『トウシ』の名乗りを聞いた時ぐらいから、記憶がどんどん鮮明になってきている。俺は、もう、自分が神の王だった時代のことを、夢だとは認識していない。全部、覚えている。記憶力はしょっぱいはずなのに……なんで、こんなにもシッカリと覚えているのか、不思議だ。特にゼノリカに関することを、不思議なぐらい、鮮明に憶えている。忘れようとしても忘れられないぐらい……強く……まるで、俺を縛り付けるみたいに」


「そのぐらい、大事にしている記憶だということだろう。貴様は、口では、時折、あれこれしょうもないことを言っているが、結局のところ、ゼノリカのことが大切で仕方がない。貴様は、ゼノリカに所属している者のことを、全員、自分の子供ように思っている」


「そこまでではないと思うけどねぇ……そもそも、『ガキがいる感覚』が、『本当のところ』では分からない。養子や弟子は散々育ててきたが、『自分の血を継承したガキ』を育てたことはないから」


「血をついでいるかどうかで線引きする必要性はないと思うが? 大事なことは、どういう想いで育ててきたかだろう」


「アウターゴッドの王様ともあろうものが、なんで、良識ある人間みたいなセリフはいてんだよ。特殊ギャグが過ぎて、逆に、最強のコズミックホラーだな」


 などと、ファントムトークで、軽く場をにごしてから、

 センは、


「完全童貞で、ガキの一人も作ったことがないのに、『大事なガキに殺される』って経験だけは、ここから、どんどん豊富になっていくわけか……泣けるねぇ」


 と、冗談っぽく口にしているが、

 『確定している未来』を想って、

 センは、また、一筋の涙を流した。


 『敵』から、どれだけダメージを受けても、センは折れたりしない。

 体に痛みは感じても、心に痛みを感じることはそうそうない。

 敵との闘いであれば、どんなに苦しくても、歯をむき出しにして、心を強く燃やすことができる。

 自分を奮い立たせるために、あえて、強い笑顔を浮かべることもあるだろう。


 けれど、十席相手に、『本気の死闘をこなして、最後には殺されなければいけない』という現状は、さすがに、笑っていられない。


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