37話 ハスターを持つ俺こそが最強。
37話 ハスターを持つ俺こそが最強。
「なにやっとんだ、セェエエエン!!」
と、全力でセンを殴り飛ばしていくカンツ。
しかし、
「疲れ切ったその拳で、俺を飛ばせるなんて夢みちゃダメダメぇ!!」
そう叫びながら、センは、カンツのカウンターに豪快な返しをいれていく。
「ぐぅうっ!」
センの拳を顔面で受け止めたカンツ。
『携帯ドラゴンを使えない者』の拳とは思えない重さ。
カンツは『おそらく、あの剣がエネルギーを供給している』と、すぐさま推測する。
センのありえない力で豪快に吹っ飛んだカンツだったが、
すぐさま、体勢をたてなおして、田中の盾になるために動く。
この辺の徹底したメンタルと覚悟がカンツの中心。
カンツは、田中の盾をしつつ、
センに、
「セン! その殺気、どういうつもりだぁ! シャレですまんぞぉ!」
センエースの熱量から、本気の殺気を感じ取ったカンツは、
それに呼応するように『本気の怒り』をセンに向ける。
当然の話。
現状のカンツにとって、もっとも大事なもの、守らなければいけないと感じているものは、田中シャインピースという英雄。
その英雄を本気で殺そうとしている大バカ者に対しては、当たり前の怒りがわいてくる。
カンツにとって、今のセンは、『我が子を殺そうと襲い掛かってきた変質者』と同じ。
「いっさい、シャレじゃねぇよ。俺は、本気で、田中を殺しにきたんだ。そのために、ハスターと契約した。渡りに船だったぜ。ただの船じゃなく、豪華客船だな。最強格のGOOと利害が一致して契約することができた」
(あの剣……やはり、ハスターか……そんな気はしていたが……)
センがもっている剣からは、このあいだ戦ったばかりの『ハスター』の圧力を感じていた。
「最強GOO・ハスターのコスモゾーンレリックを持つ俺こそが最強! 俺こそが主役! 俺こそが王! 俺こそがヒーロー! 主役も王もヒーローも、たった一人しかいないからこそ、まばゆく輝く! 中心人物は二人もいらない! 俺だ! 俺だけが美しく輝く世界! それだけが俺の望み! そうじゃない世界なんかいらん! 田中がいる限り、俺は、この先も、ずっと、日陰者! 主役になれない! そんなのいやだぁああああああ!!」
『自己中心がエグい発狂したサイコ』が、とんでもなくサマになっている。
『サイコの仮面のかぶり方が、ハンパなさすぎる』というのと、
『田中に対する感情論はガチである』というのと、
『ここまで、ずっと、田中に対して、イカれた態度を示し続けてきた』という確かな実績もあって、誰も、『今のセンの言動』に『疑いの目』を向ける者は存在しない。
『あ、こいつ、ついに一線をこえやがった』
『あの人はいつかやると思っていました』
という、『純度の高い呆れ』を感じている者ばかり。
ここに関しては、『十席のメンバーの出来が悪い』という話ではない。
センエースの『田中に対する殺気』が『あまりにガチすぎた』という、それだけの話。
現状のセンエースの『血走り方が尋常じゃない目』と『あまりにもマジすぎる言動』を見てしまえば、『ははーん、こいつ、マジだな』となってしまうのも仕方ない話。
センの目を見てしまえば、へたに演技を疑える者はいないだろう。
だって演技ではないから。
センは、ガチンコで、田中を殺す気でいた。
『どうせ、タイムリープでリセットされるから、このチャンスに、5~6回ぐらいは、マジで殺してやろう。そういう気持ちでいた方が、十席もマジで守ろうとするだろうし、最後の最後では、ためらわずに俺を殺すだろう。つまり、この殺気はジャスティス。田中をガチで殺しにかかることは、世界のため! 俺は悪くない! 俺は正しい!』という想いが、なくもなかったりするのである。
ちゃんと最低である。




