32話 大事な家族に、数百億回単位で殺され続けるという無上の地獄。
32話 大事な家族に、数百億回単位で殺され続けるという無上の地獄。
「この資料には、俺が、『十席に500億回ぐらい殺される予定』って書いてあるんだけど……」
「最低でも500億回や。正直、500億程度でいけるかどうか微妙なところ。最悪の場合、もっと殺されてもらうから、よろしく」
「よろしくじゃねぇんだよ。アホなのか、君は」
「そこそこ賢いと自負しとる。少なくともアホ呼ばわりされるほど、しょっぱいスペックではないつもりやけど?」
「え、あのさ……これ、マジでやらなきゃいけない感じ。俺、これから、あいつらに殺され続けるの? ちょっと、もう、ほんと、えっぐぅ。こんなプランを考えるとか、お前の頭、マジでどうなってんだ? 世界最高クラスの拷問官でも、ここまでの地獄は立案できねぇだろ。……ほんと、マジで、なんなんだ、この、俺に対する『果てしない嫌がらせ』みたいなプランは。こんな企画書持ってくる暇があるなら、お前が率先してやってろ。そうだ。そうしよう。決まった。これから、十席に500億回殺される田中きゅんに拍手」
「センエースの膨大な経験値やから意味がある。ワシ程度を殺したところで、大した経験値にはならん」
「何言ってんだ、田中ぁ! てめぇは全銀河一の大天才だろうがぁ! 俺みたいなハナクソとは次元の違う領域にいる超天才! お前を殺すことで得られる経験値が、俺を殺すことで得られる経験値より劣る?! 誰だ、そんなありえないことをほざいているおバカさんは! 俺の前に引きずり出せ! 『腹かっさばいて引きずり出した小腸』で、二重飛びの世界記録に挑戦してやる!」
と、田中に対する『激しい信頼感』を前面に押し出してから、
「というわけで、がんばれ、田中。お前がナンバーワンだ。頑張って、十席に500億回殺されてやってくれ。骨は拾ってやる。そして、生ごみの日に出しておいてやる。いや、骨は資源ゴミ日か? それとも粗大ゴミの日? カンビンペットではないよな? 骨って、どのゴミの日に出せばいいと思う?」
「ハッキリ言っておくぞ、セン。ワシには、あいつらのために、そこまでしてやる義理がない」
「……ぅ」
「あいつらが死ねばシュブの召喚は止められるんやから、ワシからしたら、あいつらを殺したらそれですむ話。ぶっちゃけた話、あいつらがおろうがおるまいが、ワシの人生にそこまで変化はしょうじへん。ワシに任せるいうんやったら、ワシはあいつらを殺す。冗談でもハッタリでもない。あいつらを殺さんかったら、この世に存在する命全部がシュブに殺されるからな」
「……」
「あいつらだけ死ぬか、全員死ぬかって話。功利主義の問題にもならん実質一択のベリーイージー問題。ワシはアホやないから、迷わず正しい道を選ぶ」
「……」
「――選べ、センエース。『十席が死ぬことなんざ、なんの問題もない』というのなら、さっきの話は忘れてくれてええ。ワシがあいつらを殺しとく。けど、お前がもし、十席を殺したくないというのなら、ある程度、全力で協力してやる。ワシかて別に、あいつらを殺したいというわけやないからな。ころさんでええ方法があるならそっちを選びたい。あいつらに何百億回も殺されるんとか無理やけど、お前にちょっと協力するぐらいはしたる。……てか、そのつもりやったから、ニャルには、ワシが死んだらシュブが召喚されると嘘をついてもろたんや」
田中のプランは単純。
・『ハスターに乗っ取られたセン』が、『シュブを召喚するため』に田中を狙う。
・そんなセンの愚行を邪魔する十席。
・センは十席に殺されて死ぬ。
・センエースを殺した経験値で十席ウハウハ。
・『この上なく尊き魂の系譜(『子(配下)』の強化は『親』の強化)』の効果でセンもウハウハ。




