31話 方法は一つだけ。
31話 方法は一つだけ。
「シュブは俺の手持ちにする。ヨグだけじゃ、俺を飾る宝石は足りない。俺の潜在能力を考えると、手持ちのアウターゴッドが単騎だけってのは、流石にしょっぱすぎる。俺は全部ほしい。だから、すべてを奪いとる。この世の全部が俺のもの。……以上だ。『俺が全部を総取りする方法』に関しては、てめぇが考えろ。天才なんだろ? できなきゃ殺すから、そこんとこ、よろしく」
「……ものすごいワガママぶりやな。病的な高潔が聞いてあきれる」
「で? 何か方法を思いついたか? 思いつかないなんて言わせないぞ。お前は天才なんだから。天才は、常に、答えを導き出さないといけない。俺みたいな凡人は、天才が答えを出すのを、親指でもしゃぶりながら待っていれば、それでオールオッケー。なんて楽な立場なんでしょう。そんな凡人の俺とは違い、天才のお前は地獄を見るのがデフォルト。華麗に全てを解決して当然、ミスったら大炎上――お前はそういう宿命を背負っている。あー、よかった、俺、天才じゃなくて。楽だわぁ。凡人、最高ぉ! ふぅうう!」
「実際のところ、嫌味ぬきで、そっちのポジションの方が、絶対に楽な気がするなぁ」
と、一度、普通の不満を口にしてから、
田中は、
「ニャルから聞いたところによると、お前の、その『無茶な要求』を達成するための方法が、一つだけある」
「あるんかい。自分でも、だいぶ無茶な要求してんなぁ、と思っていたのに、あるんかい。――で、どうすんの? ちなみに、『俺は寝ているだけでよくて、面倒なところは全部お前がやってくれる』という形式の作戦を希望する。俺が頑張らないといけないパターンはなしの方向で」
「……方法は一つだけや。聞いてみて、無理そうやったら、諦めたらええ」
と、前を置いてから、
田中は、センに『プランの概要』を説明していく。
簡単に言えば、
『舞い散る閃光センエースが、【はぐ〇メタル】ばりの最高品質の経験値として、十席に殺されまくることで、十席連中を覚醒・底上げして、全員で、シュブを倒す』というプランだった。
「――『センエースを殺す難易度の高さ』を『世界(魂魄処理機構)』は正しく理解しとる。お前を殺した時の経験値は、『お前が背負っているチート(経験値12000倍)』が二度見するレベルで半端ない。そして、十席たちの潜在能力もハンパやない。どいつもこいつも超天才。センエースを経験値にするというイカれたパワーレベリングで膨れ上がった十席たちと、その過程で鍛え抜かれたお前なら、あるいはシュブを倒すこともできる……かも」
「……また、すごいこと言い出したねぇ、田中きゅん」
センは、田中からさしだされた『田中印のプランが書かれた資料』を片手に呆れかえる。
資料に目を通しながら、センは、
「この資料には、俺が、『十席(特待生)に500億回ぐらい殺される予定』って書いてあるんだけど……この一文は高度なボケ? それとも瀟洒なシャレ?」
「最低でも500億回や。正直、500億程度でいけるかどうか微妙なところ。最悪の場合、もっと殺されてもらうから、よろしく」
「よろしくじゃねぇんだよ。アホなのか、君は。いや、アホなのか、というか、アホだな。頭が、とても、残念な仕上がりでいらっしゃるご様子。脳細胞の死滅、お悔やみ申し上げます」




