30話 センエースを動かす理由。
30話 センエースを動かす理由。
「まさか、てめぇ、俺に刺客を放ったのか? そして、その刺客単騎じゃ俺を削り切るのは無理そうだからと、大将自ら、俺の首をとりに、最前線へと出張ってきた、と。なかなか見上げた『性根の腐りっぷり』じゃぁないか。いいだろう。頂上決戦といこうじゃないか。俺とお前、どっちが真の主役にふさわしいか……ここで、血で血を洗いながら、決めたろぉやないかぁあああああ!! 死ねぇええええ!」
と殴りかかるが、
当然、今の田中に、今のセンの拳が届くわけもなく、
センの拳は、田中の片手にサラっと受け止められる。
「じゃれとる暇はない……というワケでもないんやけど、時間をドブに棄てるんは趣味やないから、話を前に進めたいねんけど」
「話は、今、まさに、前へ前へと進んでいる。この物語は、俺とお前、どっちが覇権を握るかというストーリー」
「もうええから、話聞け、ボケ」
そう言いながら、田中は、センの脳天にゲンコツを落とした。
「どわぁあああ! 割れたぁあああ! 完全に割れたぁああ! 訴訟ぉおおお! 刑事訴訟ぉおおお!」
などと、豪快にクレーマーぶりを発揮するセンに、
田中は、トーンを抑えて、
ガチの風味で、
「このままやったら、十席全員を殺さんといかんくなる。それでもええなら、ずっとチョケとけ」
流石に、ガチの色を出されると、
『大嫌いな田中を前にしたセン』も、シリアスにならざるをえず、
目の色を変えて、
「……どういう意味だ?」
と、丁寧に『続きを促す言葉』を発する。
田中は、淡々と、冷静に、
「ニャルからもらった『ほんまの助言』を、お前にだけ伝える。十席連中には、『ワシが死んだら、アウターゴッド【シュブ=ニグラス】が召喚される』と嘘をついてもろたけど、ほんまは、十席連中全員を殺さん限り、シュブが召喚されてまう」
「……」
先ほどまで騒いでいたのが嘘のように、
黙って、まっすぐな目で、田中の言葉に耳を傾けるセン。
普段は、ただのクソカスでしかないセンさんだが、
大事なものの命運がかかった場面では、
誰よりも深く、その状況と向き合うのが、
センエースという男のデフォルト。
「このままやと、十席全員を殺さんといかん。なんぼなんでも、シュブには勝てん。タイムリミットはあと三日。三日以内に、十席全員を殺すか……それとも、シュブに世界を滅ぼされるか。その二択が現状」
「……」
「というわけでセン……お前の意見を聞きたい。どうする?」
「どうするもクソもない。十席は俺のコレクションだ。あいつらは俺を飾る装飾品の一つ。俺を満たす道具の一つ。ゆえに、絶対に殺さない。そして、シュブは俺の手持ちにする。ヨグだけじゃ、俺を飾る宝石は足りない。俺の潜在能力を考えると、手持ちのアウターゴッドが単騎だけってのは、流石にしょっぱすぎる。俺は全部ほしい。だから、すべてを奪いとる。この世の全部が俺のもの。……以上だ。『俺が全部を総取りする方法』に関しては、てめぇが考えろ。天才なんだろ? できなきゃ殺すから、そこんとこ、よろしく」




