27話 田中さえいなければ……
27話 田中さえいなければ……
「いやぁ、なかなかやるねぇ。もちろん、アウターゴッドの僕からすれば、『ゴミみたいな虫ケラ同士』の『しょっぱい小競り合い』に過ぎないわけだけれど、見世物としては、なかなか悪くなかったよ。『大量のアリ』と『一匹のゴキブリ』が喰い合っているのを見ている感じかな。ほどよくファニーで、適度にインタレスティング。……それぞれが、最善を尽くして、よく戦った。痛みに耐えてよく頑張った。感動した。してないけど」
軽やかなおしゃべりで場の空気を乱していくニャルを尻目に、
田中が、メンバーに向けて、
「どうやら、ワシが殺されたら、世界が終わるっぽいから……悪いけど、今後は、ワシの命を最優先にしてもらってええか?」
そんな田中の発言に、カンツが、クワっと、目を見開いて、
「もとよりお前の命が最優先だ! お前がいなくなったら、世界の主軸がいなくなる!」
と、そこで、カンツは、他のメンバーに目を向けて、
「今後は、田中を前線に出すフォーメーションではなく、なるべく田中を温存するフォーメーションでいくぞ! 厄介なことになったが、世界を守るためだ! ぐだぐだ文句は言ってられん!」
と、今後の方針を伝えるとともに、力強いハッパをかけていく。
★
――一方、そのころ、センさんは、
自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、ムーア最終の作成に勤しんでいた。
「……すげぇ……とてつもなく無駄な時間だ……大量の仲間が必要なのに、肉がたりねぇ……レベル10にするだけでもすげぇ時間がかかる。この苦行を乗り越えたはてに、ムーア最終をつくれたからって、だからなんなんだ。……なんか、もう嫌なんだけど……なんで、俺、こんなことしているんだろう……あ、死にたい。すごく死にたい」
そうつぶやきながらも、
センさんは、ポチポチと、ゲームボ〇イと向き合う。
そうしていないと、心が砕け散ってしまいそうだったから。
「……こうしている間にも、完璧超人のタナカ=サンが、大活躍しているんだろうなぁ……あー、ヘラるわぁ……あー、しんどい、しんどい……」
自室で一人、ぶちぶちと、愚痴をたれているだけの背中は、
正直、普通に見ていられなかった。
「田中さえいなければ……田中さえいなければ……まあ、田中が、いなかったとしたら、ツァールに殺されていた可能性が普通にあるなぁ……いや、俺なら勝てた。なんだかんだで、最終的には、俺の閃拳で、貫いていたはずだ……たぶん、きっと……おそらく……いや、確実に! だって、俺だぞ? この俺が、あんな、ロイガーの色違いごときに負けるなんてありえねぇだろ。なんせ、俺、一回、ヨグに勝ってっかんね? ヨグ=ソトースに勝ってんだよ、俺。な、ヨグ。そうだろ? 俺を肯定しろ、ヨグ。そして、自分を否定しな。自分自身で、てめぇの存在価値を殺せ」
と、謎の声をかけるが、呆れているのか、ヨグはまったく相手をしてくれない。
「瀟洒にボケてんだから、風雅につっこんでくれよぉ」
と、メンヘラ極まりない『かまってちゃんアピール』が止まらない。
だいぶ末期です。
本当にありがとうございました。
「ああ、もうほんとイヤ……田中、死ねばいいのに……いや、もう、死ねばいいじゃないな。俺が殺す。あいつは、この手で、八つ裂きにしないと気がすまない。皮という皮をはぎとり、骨という骨を砕きに砕き、地獄の業火で焼き尽くす。それでも、俺の怒りは有頂天から抜け出せない。




