26話 『田中と愉快な仲間たち』VS『ハスター』。
26話 『田中と愉快な仲間たち』VS『ハスター』。
田中は、丁寧かつ慎重な対応で、
ハスターの一撃を処理していく。
「ハタタカミ:ソードスコール・ノヴァ」
回避ではなく、あえて、攻撃を仕掛けることで、
ハスターに一発かましていく構え。
爆発属性の攻撃を至近距離で使ったので、田中もダメージを受けたが、
事前に、対雷属性に特化したオーラドールを無詠唱で展開させておいたので、
ほとんどダメージを受けてはいない。
「……なかなか強烈な一撃をくれるじゃないか。普通に痛かったぞ」
そう言いながら、ハスターは、空間を駆け抜けて、
田中に対し、四方八方から、多角的かつ多彩な魔法の連撃を浴びせる。
ハスターは、かなり強大な力を持つGOO。
それは間違いない。
ほかの神話生物研究会のメンツなら、25人全員でかかっても殺されてしまうだろう。
そのぐらい強大な力を持つハスターだが、田中に対しては、詰め切れずにいる。
とにかく、田中が強すぎる。
『タイマンでも殺し切れないぐらい強い』というのに、
ここには、『田中のサポート役』が『25人』もいるから、
よけいに、対処しきれない。
――最初こそ、神話生物研究会のメンバーも戸惑っていたが、
しかし、それは、本当に、最初の数秒だけの話で、
状況が、ある程度理解出来て以降は、
ハスターから田中を守るために、
完璧なフォーメーションで、
田中の補助役を十全にこなしている。
ハスターは強かった。
非常に強かったのだが、
「……ちっ……」
田中シャインピースと25人の愉快な仲間たちを前に、
しっかりとした完全敗北を喫する。
ちゃんとボロボロになっているハスターに、
『激しい戦闘の高揚で脳がバキバキになっているダイナマイト・ダリィさん』が、
「どうだ、ごらぁああ! アウターゴッドは、ぶっちゃけ、どうにもならんくさいが、GOOが相手なら、どんだけ強くても、俺らなら、どうにかなるんだよぉお!」
続けて、ヒッキ・エイストレイジさんが、ボソっと、
「私らだけだと、たぶん、圧殺されていただろうけど……田中がいる今は、GOOまでなら、誰がきてもどうにかなるかな」
続けて、グレイ・リュートマ・O・ノッカイさんが、
「もろもろふくめて、『田中を殺される』のがNGってことが、より理解できたね。とられた瞬間に負け確定だって話」
25人全員が、『現状』を理解していく。
その様子を、
田中シャインピースは、満足げな顔で見つめていた。
内心を悟られないよう、
そして、誰にも気づかれないよう、
ソっと、ハスターに、意味深な視線を送る。
その視線を、めざとくキャッチしたハスターは、
そこで、田中を睨みながら、
「今日のところは引いておくが……私はいつでも、貴様の命をねらっている。そのことを忘れるな」
そう言って、影にとけていった。
残された面々は、緊張から解放されたことで、一気に疲労感が押し寄せてきた様子。
異常体力組は、普通に、まだ元気そうだが、
後衛組の何名かは、その場でへたりこんでいる。
損壊はほぼ皆無、誰も腕の一本たりともなくしていない、
と、比較的、楽勝で撃退したわけだが、
『疲れる・疲れない』はまた別の話。
マラソンで死人は出ないが、終わったらへたりこむもの。
そんな、『ハスターを撃退した神話生物研究会の面々』に対し、
ニャルが、一度、ぱちぱちと、かわいた拍手をおくり、
「いやぁ、なかなかやるねぇ。もちろん、アウターゴッドの僕からすれば、『ゴミみたいな虫ケラ同士』の『しょっぱい小競り合い』に過ぎないわけだけれど、見世物としては、なかなか悪くなかったよ。『大量のアリ』と『一匹のゴキブリ』が喰い合っているのを見ている感じかな。ほどよくファニーで、適度にインタレスティング。……それぞれが、最善を尽くして、よく戦った。感動した。してないけど」