25話 完璧で究極の邪神様。
25話 完璧で究極の邪神様。
「――『君の死』が『アンリミテッド・シュブを呼ぶ最短である』と、いうことを、どうやら、『ハスター』は知っているみたいだ」
ニャルの言葉を聞いた田中は、まるで、状況でも整理するみたいに、
「ワシを殺すだけで、楽に、完全体シュブを召喚できる……ということを、ハスターが知っとるということは……もしかして、ワシは、ハスターに命を狙われとるんかな?」
「狙われているね。ていうか……今、こっちにきているね」
「……『ウムルよりも強い』という程度やったら、どうにかなると思うけど……あ、ちなみに、ニャル様よぉ。あんたにお願いして、ハスターを消してもらうってことは可能? もしくは、ワシにかかっとる呪いを消すことは可能かな?」
「強大で偉大で、完璧で究極な、この上なく尊い混沌の神である、このニャル様がその気になれば、ハスターなんてワンパンどころじゃないし、君の呪いに関しても秒だよ、言うまでもなくね」
「なら――」
「けど、やらないよ。僕は、そういう神様じゃないからね。僕みずから、君たちに危害は加えない。僕発信で、何か厄介ないやがらせをしたりもしない。面白そうなお願いごとだったら、対価と引き換えに叶えてあげてもいいとは思っている。けど、つまらなくなりそうな願いは死んでも叶えない。君の呪いも、ハスターの暴走も、どっちも面白い。だから、その辺に関しては手を出さない。絶対的に傍観者を決め込む。解決を望むなら、自分達であがき、なげき、くるしみ、もがきなよ」
「……厄介な神様やなぁ」
「そう。世界で一番厄介な、完璧で究極の邪神様。それこそが、この僕、這い寄る混沌ニャルラトホテプのアイデンティティさ。たのしいこと、ダイスキー。つまらないことは、ダイキラーイ。そんな感じで、神生やらせてもらっているんで、そこんとこよろしくぅ」
と、その時だった。
突如、虚空にジオメトリが描かれて、
その魔方陣の奥から、
黄衣の王が現れる。
――異質な空気感を纏っている『黄衣の王』は、
「……」
眼球の動きだけで、周囲を確認すると、
まずは、視線を、ニャルにロックして、
「……手ぇ、出さないでくださいね、ニャル様」
「もちろん」
と、軽く言葉をかわすと、
ニャルはスっと、一歩引いて、
黄衣の王は、田中の方へと歩を進める。
「悪いが死んでもらうぞ。恨みはないが……俺は、どうしても、シュブ=ニグラス様を呼びたいのでね」
そう言うと、ハスターは、グっと全身に力を込めた。
と、思った直後には消えていた。
常人の目では追えない速度で、田中の背後を奪い取り、
田中の心臓を、最短距離で奪いにいく。
心臓を奪われても死なないゾンビもいるにはいるが、
しかし、大概の場合は、心臓を貫かれたら即死する。
だからこそ、当然、抵抗もする。
田中は、丁寧かつ慎重な対応で、
ハスターの一撃を処理していく。
「ハタタカミ:ソードスコール・ノヴァ」
回避ではなく、あえて、攻撃を仕掛けることで、
ハスターに一発かましていく構え。




