21話 僕の名はニャル。
21話 僕の名はニャル。
「ひさしぶり?! 貴様と会うのは初めてのはず――」
そんなカンツの言葉を遮るように、その美青年は、食い気味に、
「もちろんそうさ。僕と君は、今日、今、この瞬間こそが、初対面。はじめまして、よろしく、どうぞ」
その『過剰なほど飄々とした態度』に、
カンツが、警戒心をむき出しにしたまま、
「……貴様は何者だ?! ワシらの敵か?! 敵を名乗るのであれば、容赦はしない! どっちだ?!」
「おやおや、寄り道のない態度だね。感情がないと言ってもいい。僕の軽やかな発言に、少しぐらいは、イラついてほしかったんだけど……まあいいや」
そこで、美青年は、コホンと軽いセキをはさんでから、
「僕の名前はニャル。最高クラスのアウターゴッドさ。よろしくどうぞ」
そんなニャルの自己紹介を受けて、
カンツが、額に冷や汗を浮かべながら、
「あ、アウター……ゴッド……」
「ちっちっち、ただのアウターゴッドじゃない。最高クラスのアウターゴッドさ。ヨグやシュブも、相当な実力者だけれど、僕は、そいつらを超えている。その気になれば、ヨグのおっさんや、シュブのBBA以上の輝きを発揮することもできるんだ。謙遜で、最高クラスと言ったけれど、実際のところは、普通に、最強のアウターゴッドさ。よろしくどうぞ」
「……迎撃態勢!!」
カンツは、あふれんばかりの勇気をきらめかせて、
全員に対してオーダーを発令する。
けっして、周囲に命令するだけではない。
カンツはそういう男ではない。
彼が指示を出すときは、自身が誰よりも働く時、と相場が決まっている。
「どらぁああああああああああああああああっっ!!」
迷うことなく、最も危険な『探りの初手』を担当する。
――とてつもなくヤバい化け物が現れた。
となった時、カンツがどうするか。
答えは、現状。
自分自身を、この世界の盾と剣にして、危険を排除しようと、全身全霊を尽くす。
『一番槍』として突撃したカンツ。
後先考えない『全力の一撃』を、ニャルの顔面に叩き込んだ。
――のだけれど、ニャルは、
「ははは。気合いが凄いのは認めるけどねぇ」
鼻で笑いながら、
自分の顔面を全力で殴りつけてきた相手の肩に、
かるく、ポンと手をおいて、
「まあまあ、落ち着きなよ、ゴリラボーイ。アウターゴッドを目の当たりにして、発狂してしまう気持ち、わからないでもないけれど……君らごときが、何したって、無意味だから」
殴られたニャルの顔面はなんともなっていない。
そして、殴ったカンツの拳も、なんともなっていなかった。
顔面を殴ったという感触は確かに在ったのだが、しかし、手ごたえというものがまるでなく、痛みも、衝撃も何もない。
硬いものを殴ったとも、柔らかいものを殴ったとも感じていない。
何とも奇妙な感覚だった。
だまし絵でも見ているような気分。
「君らの力を、仮に、500~900ぐらいだとしよう。その時、僕の数値が、いったい、どのぐらいか……ちょっと、予想してみようか。言ってごらん、ゴリラボーイ。僕は、どのぐらいだと思う? あ、ちなみにヒントを言っておくと、1000という数字は、なかなか超えられないよ。最強格のGOOでも1000は超えていないからね。超えられない壁が1000。1000をこえたら大したもん。それを踏まえた上で、さあ、予想を言ってみよう」
「…………10000」




