20話 皆さんご存じ、黒い多面体。
20話 皆さんご存じ、黒い多面体。
――その日の夜も、
田中シャインピースを中心とした神話生物研究会は、
ダンジョンの中を探索していた。
難易度『無理』級のダンジョンだったのだが、
しかし、スーパー天才超人『田中シャインピース』がいるため、
サクサクと奥へと進んでいくことができた。
ほんのわずかな時間で踏破してしまった無理級ダンジョン。
ゴール地点で、ダイナマイト・ダリィが、ボソっと、
「すげぇな、田中。このダンジョン、出てくる敵の強さがハンパじゃなかったのに、ほとんど秒でクリアしちまったじゃねぇか。なんつぅか、すごすぎて、言葉もねぇ。てか、お前、どんどん強くなってねぇか? 昨日よりも、さらに、凄みがました気がするんだが、気のせいか?」
その発言に続くように、カンツが、
「がはははは! いや、気のせいではなく、田中の圧力は、明らかに機能よりも増している! 本当に、すさまじい男だな、お前は! 無限に覚醒し続ける天才! お前ほどの男は、他にいないだろう!」
と、全力で、田中に対し、本気で思ったことを口にする。
カンツのその絶賛は、決してカンツだけの特別ではなく、ここにいる全員が思っていること。
とにかく、田中シャインピースはエグすぎる。
ほかの25名の神話狩りたちも、それぞれ、田中の異常性に対して感想をのべたり、驚嘆したりしている。
そんな様子を尻目に、田中は、ゴール地点の一番奥に設置されている宝箱の元まである気、当然のように、その宝箱を開ける。
中には、
「……ダンジョンの難易度にふさわしい報酬……かもしれへんな」
そう言いながら、
田中は、宝箱に手を伸ばす。
田中が宝箱から回収したのは、『黒い多面体』だった。
「なんやようわからんけど……この黒い塊からは、えげつないオーラと魔力を感じる……」
その言葉に、他の面々も同意する。
その黒い多面体からは、禍々しい迫力を感じた。
カンツが、
「田中! それをよこせ! 下手に持っていたら、危ういかもしれん! お前には、命の王としての使命がある! 無意味にリスクを取る必要はない! 奇妙な危険性を感じる場面では、ワシらに丸投げしろ!」
過保護を炸裂させる。
カンツは、基本的に、『自分が王と認めた相手』に対しては、『対応のブレーキ』がきかなくなる傾向にある。
カンツが、田中の手の中から、黒い多面体を奪い取ろうとした、
その時、
黒い多面体が、
ブルブルと震えながら、
強い黒色で発光しはじめた。
輝きは、いつしか粒子となって、
パラパラと世界に舞い散って、
一つのシルエットをつくりだす。
次第に、
シルエットは、影となり、
影は、
黒肌の美青年となった。
「ふぅ……ひさしぶりだね、みんな。元気にしてた?」
黒肌の美青年は、ニィとイタズラな笑顔を浮かべてそう言った。
想定外の挨拶に対し、
カンツは、訝しげな表情で、
田中の盾が出来るポジションを陣取りながら、
「ひさしぶり?! 貴様と会うのは初めてのはず――」
そんなカンツの言葉を遮るように、
その美青年は、食い気味に、
「もちろんそうさ。僕と君は、今日、今、この瞬間こそが、初対面。はじめまして、よろしく、どうぞ」




