16話 十席に、センを、100兆回ほど殺させれば、何かがどうにかなるんじゃね?
コミカライズ版センエース、
10話配信記念のイベントとして、
一日10話投稿を実行中!
本日の6話目!
16話 十席に、センを、100兆回ほど殺させれば、何かがどうにかなるんじゃね?
「……死を目撃させるだけじゃ弱い……もっと……もっと、こう……そう、たとえば……『十席の手で、センエースを殺させる』ぐらいのことをしないとダメだ」
「配下にセンエースを虐殺させるとは……また、すごいこと考えるな……」
「それも一回や二回じゃない。何千、何万、いや、何億、何兆……何百兆……」
「それだけの数をこなすためには、センエースがコレまでに積み重ねたものをリソースとして使わなくてはいけないな」
「それだけでは、多分、足りない」
「全部を使えば足りないということないだろう。センエースが積み重ねてきた物をナメすぎじゃないか?」
「俺の予想が正しければ、センエースは、多分、俺の予想を超えてくる」
結論にいたったヌルは、
「……俺の全部を奉げれば……たぶん、どうにか……」
ぶつぶつと、何かをつぶやいてから、
そこで、
「……決めた。ナイアと契約する。毒には毒を。本気で、陰湿に、センエースを壊しにいく。そうじゃないと、『破壊衝動・蝉原』の対抗馬にはなれないだろう」
そう宣言した直後、ヌルは、アイテムボックスから、『願い玉』を取り出すと、
「こいよ、ナイア……ちょっと、お話しようぜ」
そう声をかけると、
彼らの目の前に、まがまがしいジオメトリが出現した。
そして、そのジオメトリの奥から、
浅黒い肌の青年が出てきた。
彼――ナイアに、ヌルは、
「……お前に頼みがある。センエースを、本気で殺してきてくれ。とにかく……本気で、徹底的に、全力で、惜しみなく」
そんなヌルの願いを受け止めたナイアは、
数秒だけ、間をおいてから、
「……対価はもらうよ」
と、静かな声音でそう言った。
ナイアは全てを理解している。
なんせ、ナイアは、
『破壊衝動ソル』の『制御装置』だから。
『ソル』の中に『破壊衝動』が存在し、
その破壊衝動の中に、『ナイア(ニャル)』が存在している。
・ソル構成要素。
『ソルA』『ソルD』『ソルP』(――『運命』を拒絶するソル)
+
『破壊衝動ソル(制御装置ナイア(ニャル))』(――『運命』こそが『トゥルー』であると認識しているソル。破壊衝動の中にも、運命を拒絶する思想は存在する)
+
『?』
ソルという概念は、二重三重に、『破壊衝動』を抑制しようとしている。
――『そんなナイア』だから、現状、何が起きているのか、すべて、正確に把握している。
完成した蝉原が破壊衝動の依り代になれば、
センエースを超えてしまう可能性はある。
ソレに抵抗するための行動をとるのがナイアの本懐。
とはいえ、ナイアは、契約なしでは動けない。
山ほどの縛りを受けている不自由なソマトスタチン。
それが、ナイアである。
「もちろんだ。対価は払う。……俺の全部をくれてやる」
「……対価が足りないけれど、その覚悟は気に入ったから、特別サービスで、願いを叶えてあげるよ」
そこで、ソルが、ナイアに、
「カミノの世界には、お前の因子を持つ存在が二体いる。バンプティとシャインピース……どっちを使う?」
「せっかくだし、シャインピースの方を使うよ。ヌル……田中シャインピースに、もっと、トウシの因子をぶちこんでくれる? というか、いっそ、田中シャインピースを本物のトウシにしてくれ」
・現状の簡潔まとめ。
ソルの中には『世界を終わらせたいソル』と『世界を終わらせたくないソル』の二つがいて、前者は蝉原を選び、後者はセンエースを選んだ。
蝉原が勝てば文句なしでバッドエンド。
センエースが勝てばバッドエンドを回避できる可能性がある。
厄介なのは、『センエースが勝っても、バッドエンドになる可能性はある』ということ。
『トゥルーエンディング(何もかもが完璧な世界線)』に辿り着くかどうかは、センエースの努力しだい。




