22話 会議は踊る。
22話 会議は踊る。
(シューリは変態のキ〇ガイだが、異質な才能の持ち主であることはうたがいようのない事実。これまでは、相手にしたくなかったから、まともにとりあわなかったが……もし、あいつが、ヤオヨロズの迷宮に関して『何か知っている』というのであれば……)
誰か使いを出して、正式に話を聞こうか――などと、皇帝が考えていると、
そこで、
「陛下。ヤオヨロズの迷宮に、冒険者を駆除係として派遣してはいかがでしょう?」
と、進言があったので、皇帝は、
「あの迷宮には、これまで、何度か人を送ってきたが、有能な冒険者チームを、いたずらに死なせるだけに終わった」
「それは存じておりますが、しかし、こうなった以上、放置するのは愚策かと。今後も、神級のモンスターが出てくる可能性がある以上、攻めた姿勢の対処は必須」
「その、ガットネロとかいうチームを送ったらいかがでしょう? 神級を対処できるだけの冒険者チームともなれば、何か成果をあげることも不可能ではないでしょうし、『万が一』がおきても、逃げのびるぐらいはできるでしょうし」
と、人材派遣を提案する派閥もあるのだが、
「優秀な人材を損失する可能性が少しでもあるのなら、やめておくべきだ。皇族の御方々と、上位冒険者チームが結束して防衛にあたれば、ヤオヨロズの迷宮から、どんな化け物が出てきても対処することは可能。下手にヤブをつついて蛇をだすより、『時折、這い出てくる一匹を、できるだけ損害の少ない形で、確実に処理するマニュアル』を作成した方が、合理的だと判断いたします」
と、防衛重視の提案をしてくる派閥もある。
『誰もが同じ方向を見て、一つの絶対的な結論が出る』などということは少ない。
人の感情は千差万別。
『恐怖の色』も、『楽観の方向性』も、バラエティに富むのが人間の社会性。
人が二人以上集まれば、どうしても、
程度はどうあれ、必ず、
保守派と、急進派で意見が分かれてしまうもの。
「私としては、ヤオヨロズの迷宮に、『覇剣』を送りだしたいところですね。今回の中央カジノ防衛失敗の責任を、体を張る形で取っていただきたいと考えております」
「10つ星冒険者は、国防の面において最重要な存在。ヤオヨロズの迷宮のような、異常な場所に送るべきではない。送るとしても、7つ星ぐらいの冒険者にした方が」
「それでは殺されてしまうだけでしょう」
「なぜ、冒険者を送ることを前提にして話が進んでいるのか、私にはさっぱり分からない。今回、神級が出てきたのは『1000年に一度の不運でしかない』――という可能性も大いにあるのだから、余計なことはせずに、いったん様子を見る方が、明らかに合理的でしょう」
「そうですね。もし、また、神級のモンスターが登場したら、その時に、討伐部隊を派遣するか否かを考えたらいい」
「それでは遅いかもしれないでしょう。殺し合いにおいては、先手を取った方が、常に、圧倒的有利。ヤオヨロズの迷宮で、もし、何か異変が起きているのであれば、先んじて、原因を調べておいた方がいい」




