真・最終回 倍速のエンドロールを眺めながら。
真・最終回 倍速のエンドロールを眺めながら。
数秒と持たずに、シュブ盾も、ラージャンも、まとめて消滅してしまった。
「どぐぁあああああああっっ!!」
まるで、世界の終末を、一身に体験しているようだった。
蝉原の全部が消滅しようとする。
――自分の終わりを感じた蝉原は、
「……ま、まだだぁ……っ」
死を前にした極限で、
砕けるほどに、奥歯をかみしめて、
「まだ終わってやらねぇええええ!!」
全神経を、メテオの雨にロックオン。
命の全部を、これまでの人生で一番、輝かせる。
誰も、輝けとはささやいてくれないが、
しかし、そんなことはどうでもよかった。
「オメガァアアッッ!!」
腐った人生の中で魅せる最上の光。
「バスティオンッッッ!!」
本来、蝉原では不可能な技術。
だが、オメガバスティオンは、壊れた者ほど扱いやすいという特質を持つもの。
そして、オメガバスティオンの発動には、他にもいくつか条件があるのだが、
実のところ、蝉原は、一応、すべての条件を満たしている。
ゆえに、
だから、
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
生存する。
しぶとい。
ゴキブリよりも貪欲な生命力。
――もちろん、ほぼ、HP1のような状態。
ギリギリもいいところ。
しかし、どうにかこうにか、蝉原は、生きのこった。
なんとか生きのこった……のはいいのだが、
(……『残しておいた切り札』を……全部使ってしまった……)
もしもの時のために、と用意していた極上のジョーカーたち。
蝉原が、ヌルとの決戦の時のために準備してきた可能性の闇。
それをすべて賭し尽くさないと、3万メテオは防げなかった。
全部を出しつくし、
体力も限りなく0に近い。
この状態で追撃をくらうと、流石に終わり。
そんな、哀しい蝉原に、
ソルDPは、
「――『殺戮ナンバー(ランク37564)』の『煉獄・不滅彗星』でも死なないとは……大したもんだ。色々とぐちゃぐちゃにしてくれたが、『器』だけは良質なものを作ってくれたな。その功績に免じて、虫けらのように踏みつぶして殺すのではなく、オレの閃拳でトドメをさしてやるよ」
「助けて……死にたくない……これからは……いう事をきくから……助けて……」
と、最後の最後まで、嘘を吐き続ける蝉原。
どんな時でも、『蝉原勇吾が求めた蝉原勇吾』であり続ける。
『ソルが求めた蝉原勇吾』にはなれなかったが、蝉原は『瀬見原が求めた自分』であることには最後の最後まで固執した。
そんな、絶対にゆるぎない彼の姿勢を見たソルDPは、
「虹を集めた虚空。玲瓏な蒼穹。幻想の戒光。貫くような銀河を見上げ、煌めく明日を奪い取る。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。たゆたう銀河を彩りし、オボロゲな杯を献じながら。――俺は、ゼンゴート・ソルDP。不退転の混沌を背負い舞う太陽!」
コールを積んで、必要以上に、拳へ心を込めてから、
蝉原の心臓目掛けて、
「――閃拳」
芯のある重たい一撃を放った。
ソルDPの閃拳は、
「ばぴっ――」
蝉原の中心を完膚なきまでに粉砕した。
砕けた蝉原の中心を、蝉原の器から根こそぎ引き摺り出したソルDPは、
「――【弧虚炉 天螺 終焉加速】――」
完全に圧縮することで、
蝉原を、この世から完璧に消滅させた。
容赦のない瞬殺。
蝉原の暴走は、これにて終焉。
非常にあっけない最後だったが、蝉原にはそれが似合っているとも言えた。
蝉原勇吾には、『ドラマチックなエンドロール』なんか、むしろ似合わないだろう。
とことんスマートに、けれど、どこか情けなく、
ある意味で、非常に美しく、世界に溶けていった害虫。
望みは叶わず、結局のところは、『ソルに処理されただけ』だったけれど、蝉原勇吾は、それなりに、まっとうに、黒く輝いていた。
こうして、蝉原の野望は、
ソルたちの働きによって、
見事、打ち砕かれましたとさ。
めでたし、めでたし。




