62話 蝉原はやりすぎた。
62話 蝉原はやりすぎた。
「蝉原、てめぇはやりすぎた。ヌルをバグらせて、おれたちをふくめ、全てを奪い取ろうとした。そこまでの暴挙は許可していない」
「ははは、舐めてた相手に噛みつかれてご立腹か? くく、しかし、許可ねぇ 馬鹿馬鹿しい。俺は宇宙一のヤクザだよ。誰かの思い通りに優等生をやるようなフヌケじゃない。利用しようとしてきたやつは全員返り討ちにして地獄を見せてやる。それが真っ当な悪人ってやつだろう。俺をそういうふうに仕上げたのはお前らじゃないか」
「誰もそこまでやれとは言っていない。優等生になれとは言わないが、最低限のラインは守ってもらう」
「半端な偽悪でお茶を濁したいだけなら、俺以外の小物を使えばいい」
「そうしよう。お前はウザすぎて扱いづらい」
『Dゴート』がそう言ったのにかぶせるようにして、
『Pゼン』が、唇を尖らせて、
「せっかくここまで時間をかけて磨き上げてきたのに もったいないにゃぁ まっ、でもしかたなにゃ フラグメントは破壊して、器だけリサイクルさせてもらうにゃ」
そんな二人のナメ散らかした発言を受けて、
蝉原は、『生ゴミを見る目』で笑い、
「できるわけないだろ。お前らの器は『ヌルに壊されたまま』なんだから。……ゼンやゴートみたいな、『まだまだ発展途上の器』を『依代』にしないと『顕現することさえできないような悲惨な状態』で、『ヌル以上の狂気である俺』を壊せるわけないだろう」
「……それがそうでもないんだにゃぁ」
と、おどける『Pゼン』の横で、
『Dゴート』が、
「蝉原……ゴートとゼンの可能性を舐めているお前に、残念なお知らせだ。ゴートがゼンを吸収した際に発動する99999倍ってのは、『G‐クリエイション・プチ』の『経験値取得率倍率変更』を適用させた分に、さらに、乗算で乗っていくもの。つまり、ゼンを吸収すると、ゴートには『893兆倍の99999倍の経験値』が入るわけだ」
「……」
えげつない数字の暴力。
天文学的数字の羅列を前にして、
蝉原は、一切表情を変えず、
ずっと、薄く微笑んでいる。
その様は、なんとも、ラスボスにふさわしい風格だ、
と、この場にいる誰もが思わずにはいられない。
――と、そこで、
『呑まれぬように』という意志も込めて、
『Pゼン』が、
「もっというと、ゴートとゼン、両方に同じ経験値が入るんだにゃ。あ、ちなみに、いうまでもないけれど、ゴートのステータス上の『縛り』は解除してあるにゃ♪」
そう言いながら、
Pゼンは、Dゴートの胸に手をあてる。
そして、そのまま、Dゴートの中へと吸収されていった。
『ゴート・ラムド・セノワールの器』の中で一つになった『意識』は、
パっと目を開けて、蝉原を見つめながら、
「ソルPDとゴートとゼンが合体して……『ゼンゴート・ソルDP』ってとこかな」
と、軽くテンプレをかましてから、
「……存在値にして……7500兆。なかなかの数字だと思わないか?」
「思うねぇ。……EXレベルだけで、存在値を、そこまで上げられるとは……そうとうなチートだよ。すごい、すごい」




