61話 ヒーロー見参。センエースとセンエース。
61話 ヒーロー見参。センエースとセンエース。
「ま、でも、そういう、大事小事の見極めが出来ない出来損ないだからこそ、D型ソルは、君を使おうと考えたんだけどね……君なら、確実に、どんな状況になろうと、絶対に……つけいるスキを残してくれると確信していたから」
「ひゅー……ひゅー……」
「聞こえてる? もしかして、意識がない? ちょっとクリティカルヒットが上振れしすぎたかな?」
「たす……けて……」
「ん? なに? 命乞いした? 嘘でしょ? 俺に命乞いした? いやいや、意味ないよ。言うまでもないけど」
そんな蝉原の言葉をシカトして、
ヌルは、
「たす……けて……ヒーロー……」
と、
『自分の中』で待機させていたヒーローに、
救援要請を出した。
『救いを求める声』に呼応して、
ヌルの中から、
『二人のヒーロー』が飛び出してくる。
――ヌルの中から出てきた二人を見た蝉原は、
「……ふ、ふふ……」
と、小ばかにするように、鼻で笑い、
「何かと思えば……『ゼン』と『ゴート』か……はは……せめて、もうちょっと頼りになるヒーローに見参してほしかったかなぁ。例えば、カミノの中にいるオリジナルを引っ張ってくるとかさぁ」
そう言いながらも、
一応、二人を、じっくりと観察する。
「なにか、特殊なカスタムでも施されているのかと思ったけど……そのままじゃないか。ゼンの方は……まあ、サイコジョーカーのブーストありで存在値2兆ってところ。……ゴートは……まあ、全部もろもろ込みで……存在値100兆前後が関の山かな……はは、酷いな。この戦場では、クソの役にも立たないねぇ。もしかして、あれかな? 『みかづき〇まい』要員で呼んだ感じ? あのザコ二人が、命を賭して、ヌルを回復させる的な? ゼンとゴート程度の数値だと、全部を賭しても、2%回復するかしないかってところだと思うけれど?」
と、そこで、ゴートが、
「ゼンを……」
「ん?」
「吸収した際の経験値99999倍」
「……」
「ゴート・ラムド・セノワールが保有するスペシャルの中で、最上級のチートだ」
「……」
「本来なら、もっと、もっと、ゼンが大きく膨らんでから、吸収する……そういう予定だった。それが、ラスボス・プロジェクトの根幹だった。順調に成長して、『蝉原をも飲み込んだゼン』を……ゴートが吸収することで、ラスボス・プロジェクトは完成だった」
「お前……ゴートじゃないな。ソルか? タイプはDかな?」
「ああ」
「となると、ゼンはPがコントロールしている感じか……」
「そういうことだにゃ♪」
「なんで俺の邪魔をする? 俺はお前らの望み通り膨らんでいっているだけなんだが?」
「蝉原、てめぇはやりすぎた。ヌルをバグらせて、おれたちをふくめ、全てを奪い取ろうとした。そこまでの暴挙は許可していない」
「ははは、舐めてた相手に噛みつかれてご立腹か? くく、しかし、許可ねぇ 馬鹿馬鹿しい。俺は宇宙一のヤクザだよ。誰かの思い通りに優等生をやるようなフヌケじゃない。利用しようとしてきたやつは全員返り討ちにして地獄を見せてやる。それが真っ当な悪人ってやつだろう。俺をそういうふうに仕上げたのはお前らじゃないか」




