60話 メテオと盾。
60話 メテオと盾。
「ランク9000のメテオぉ?!! はぁああ?! せ、蝉原ぁ! お前、バカか! これ、お前も死ぬぞ!」
と、叫びながら、蝉原に視線を向けると、
蝉原は、何やら、『豊穣』を想起させるゴージャスな『黒い盾』を空に向かって構えていた。
「っ?! シュ――」
何かを口にしようとした1002号を、地獄の雨が襲う。
――容赦なく、全員の頭上に降り注ぐメテオのスコール。
ヌルと1002号は最大級のドリームオーラで、どうにか防御しようと、歯を食いしばって頑張っているが、黒い盾に守られている蝉原だけは、涼しい顔をしていた。
メテオが止んだ時、
ヌルと1002号は、瀕死の状態になっていた。
ボロボロの彼らに視線を送りながら、蝉原は、
「やっぱり、一発じゃ死なないかぁ……ランク9108っていう、頭おかしい魔法なんだけど……まあ、一発ぐらいは耐えてくるよねぇ」
ボロボロで地に伏せている1002号は、蝉原に、
「がはっ……そ、その……盾……は……まさか……」
「そうだよ。プライマルコスモゾーンレリック『シュブ=ニグラス』だね。……バンプティとナイアが手に入れた、ヨグ=ソトースに匹敵する最強格のコスモゾーンレリック。ヨグと違って、『どうでもいい世界に生命力をブッ込んだりしていない』から、普通に、ガチ性能で使える。シュブと契約しているのは俺じゃないから、ナイアに借りないといけないんだけどね」
「……」
「これは、ナイアとの契約……メテオと盾。本当は、トドメ用に、もう一発撃ってほしいんだけど……これ以上は、縛りレベルが下がるから無理って拒否られた」
「……ナイアもバンプティも……ヌルが……食ったはず……」
「もちろん、そうさ。けど……」
そこで、蝉原は、ボロボロで倒れているヌルを見つめて、
「甘ちゃんのヌルは、バンプティを消化できない。危険な爆弾だと理解していながら、何もできない。……まあ、それが最初から分かっていたからこそ、バンプティが活用されたんだけどねぇ。シュブの管理者がナイアだけだったら、ヌルにシュブを奪われていた可能性もある。けど、バンプティと融合している状態なら、ヌルは絶対に手を出せない。バンプティは、ヌルが大好きな『優しい子』だからねぇ。ヌルは、ゴミの始末はできるけど、少しでも気に入ったものは壊せない」
そこで、蝉原は『くくく』と小ばかにするように笑って、
「ナイア以上に、縛りが多すぎるんだよ、君は。その気になれば、全部をワガママに奪い取れる身でありながら、君は、ただ守ることだけに注力した。そんな君だから、つけこまれる。かすめとられる。利用される」
「ひゅー……ひゅー……」
息をするのもギリギリ。
そんな状態のヌルに、
蝉原は、
「ま、でも、そういう、大事小事の見極めが出来ない出来損ないだからこそ、D型ソルは、君を使おうと考えたんだけどね……君なら、確実に、どんな状況になろうと、絶対に……つけいるスキを残してくれると確信していたから」
「ひゅー……ひゅー……」
「聞こえてる? もしかして、意識がない? ちょっとクリティカルヒットが上振れしすぎたかな?」




