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58話 無数のニセモノが寄せ集まって……本物を超える光となる。


 58話 無数のニセモノが寄せ集まって……本物を超える光となる。


「君たちごときが相手の場合、山ほどハンデをあげた上で楽勝。そのぐらいの結果を出さないと、このカルマは守れない。『ぽっと出のラスボスもどきに、養分として奪われるだけの人生』なんて絶対に許容できない。一番大事なものを守るためだからね。俺はなんでもするよ、センくん」


「……一つ聞いていいか? 俺の内意識がバグって、A型センエースと同調したのは……お前が何かやったからか?」


 ヌルの言葉に対し、

 蝉原は何も言わず、

 黙って、真っ黒に、ニィと笑う。


 ――そんな風に、ヌルと蝉原が言葉を交わしている間に、

 1002号は完成した。


 『究極完全体・聖天無神1002号』。

 彼らは合体したのではない。

 1002号に、全部を注いだ。

 自我を失ってでも、1002号の装備品になることを選択した。


 彼ら元主人公たちのフラグメントは、微小ではあるものの、一応は、本物のフラグメント。

 本物から抽出した、本物にとって大事なカケラ。

 あえて『指一本分』とでも表現すれば、『実際のところ、どれだけ大事か』が容易に想像できるかと思う。

 そんな大事な『指一本』を、彼らは、

 『1002号』という『田中家の二番手の量産型パチモンの内の一つ』に『くれてやる』という決断を下した。

 これは『解除すれば元通り』という形式ではなく、

 『永遠に、1002号と共にあり続ける』――という決意。


 意識は統合され、一つになる。

 それぞれの自我は消失する。

 それすなわち、やはり、死と同義。

 復活を前提とした状態異常ではなく、文字通りの完全なる消失。


 元主人公たちのカケラは、今、死んだ。

 必死になって積み重ねてきた一部を、

 1002号に全部くれてやった。

 これは、『センエースの投資』とはワケが違う。

 ただの譲渡。


 すべてを譲り受けた1002号は、


「……ザンクさんの想いを尊重してくれたんか……ありがたい話やで、ほんまに……」


 意識の統合が起こる際に、

 カミノたちは、あえて、自分達の自我を極限まで殺した。

 『テラスを想う1002号の覚悟』を『魂魄の中心』に据えた方が、

 確実に『出力が底上げされる』と、理解していたから。


 ――合理と心中する覚悟。

 そんな強い意志を世界に魅せつける。


「無数のニセモノが寄せ集まって……本物を超える光となる……悪くない」


 などと、そんなことをつぶやく1002号。


 そのさまを目の当たりにした蝉原は、

 さらに、邪悪な笑みを強くして、


「……情緒たっぷりなご満悦に浸っているところ、水を差して申し訳ないけれど……決して本物は超えていないよ。本物のザンクは、俺と一つになって、京を超えた領域にいる。つまり、俺を超えることが、本物を超えることにつながるわけだけれど、君らは、存在値1京にすらギリギリ届いていない。散々、合体や融合や調和や強奪を繰り返していながら、まだ兆の領域でさまよっている。君たちは本当に酷いねぇ」


 とことん煽っていく。

 徹底して、極悪の化身『蝉原勇吾』であり続ける。


 そんな蝉原に、

 完全版1002号は、


「そうだな、酷いな」


 薄く笑いながら、

 武を構えて、


「そんな酷いパチモンの集合体でしかない俺にやられるオリジナルのお前は……もっと酷いわけだが」


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