57話 全てを背負う1002号。
57話 全てを背負う1002号。
「うん、やっぱり、脅威と呼べるほどじゃない。1002号は『根本の質』が低いから、いくら極上の経験値をぶちこんでも、たかが知れている」
「言い方腹立つなぁ、お前。ほんま、ずっと、腹立つわぁ」
と、まっすぐな怒りをあらわにする1002号。
そんな1002号を尻目に、蝉原は、優雅な態度で、
「これだけ反則に反則を重ねても、俺一人殺せない……それが君たちの底だ。哀しい話だね」
などと煽ってくる蝉原。
そんな蝉原を、厳しい目でにらみつけながら、
カミノは、
「これで、チートが終わりなわけねぇだろう。むしろ、ここからが本番だ」
「本番? へぇ、センくんから奪った経験値をぶちこむ以上のことがあるのかい? いったい、何をするのかな?」
「いや……うん……『ここからが本番』ってのは、さすがに言いすぎた。『センエースの経験値を奪い取った』ってのがピークではある」
と、素直な言葉を口にしてから、
「その反則と比べたら劣るが……まあ、でも、それなりにスペック上昇すると確約はできる」
そう言ってから、
カミノは、1002号に視線を向けて、
「1002号。お前のCPUをしてやる。俺を使え」
と、大胆なオーダーをかましていく。
その提案には、蝉原も、ニタリと含みのある笑顔を浮かべて、
「……ほう」
と、つぶやく。
カミノに続いて、
セイバーが、
「じゃあ、ぼくちゃんは剣になってあげちゃおう♪」
天童も続けて、
「それじゃあ、俺は翼にでもなろうか」
最後に無崎が、黙ったまま、
1002号のもとまで近づいてきて、
1002号の背中に触れた。
躊躇のない無崎の行動に続くようにして、
セイバー、天童、カミノも、1002号の背中に手をあてる。
そんな一連の行動を、
蝉原は黙って見ていた。
まるで、『小学生サッカーチームの試合』を見ている保護者のような態度で腕をくんで見つめている。
そんな蝉原に、
対峙しているヌルは、
「止めなくていいのか? あいつらが一つになったら、かなり大きくなりそうだぞ。大きくなったあいつらと俺を同時に相手にしたら、流石の蝉原さんでも死ぬんじゃね?」
「……かもしれないね。けど、君たち二人を同時に処理するぐらいの器を示せないのであれば、宇宙一のヤクザを名乗る資格はない」
「宇宙一のヤクザって肩書きを名乗るのムズすぎん? お前以外、誰も名乗れんだろう」
「ソコだけは、ずっと、俺だけの特等席。俺の命が始まった時から……いや、蝉原勇吾が始まる前から、俺は、ずっと、それだけを求めていた。全てを賭して、必死になって求めたポジション。だから、奪われないように、無我夢中で守り続けている」
「……」
「俺は本気だよ。センくん。『この上なく美しい英雄センエースの仇敵』であり続けるために、本気で努力を続けてきた。だから負けない。君たちごときに。『出来底のないパチモン』と『お人形さんの寄せ集め』なんかに、負けるわけにはいかないんだ。君たちごときが相手の場合、山ほどハンデをあげた上で楽勝。そのぐらいの結果を出さないと、このカルマは守れない。『ぽっと出のラスボスもどきに、養分として奪われるだけの人生』なんて絶対に許容できない。一番大事なものを守るためだからね。俺はなんでもするよ、センくん」
「……一つ聞いていいか?」
「なにかな?」
「俺の内意識がバグって、A型センエースと同調したのは……お前が何かやったからか?」




