56話 全財産ブッコミ型の投資。
56話 全財産ブッコミ型の投資。
「これから、閃くんが積む予定の分をぶちこむって……それは、流石に、反則じゃないかな?」
「ここまでの俺らの闘いに、反則じゃなかった箇所とかあるか? てか、ここにいる全員が、漏れなく、『道理から完全に外れまくっているチーター』だと思うんだが」
「くく……違いないね」
などと会話をしている間に、
1002号の慟哭が終了した。
先ほどまでのたうちまわっていたのが嘘のように、
静かな表情で天を仰いでいる。
「すぅ……はぁ……」
軽い深呼吸で自分を整えてから、
1002号は、
「奪い取った身でありながら、こんなこと言うんもアレやけど……これは……ええんか? センエースが積み重ねてきたもんを雑に奪い取って……その上、今後、センエースが積んでいく予定の分まで奪いとるとか……財産強制徴収の上、偽造したハンコを借用書に押したみたいなもんやと思うんやけど……仮に、蝉原に勝てても、ザンクさん、センエースに殺されるんとちゃうかな。仮に、ザンクさんが、こんなふざけたことされたら、エグいぐらいキレるで、確実に」
と、カミノの『流石に鬼畜すぎる諸行』に引いている1002号。
カミノがやったことは、事実、財産没収と強制借金。
ただ、
「問題はない。最終的には、全部、利子つけて返すからなぁ」
「え、そうなん?」
「……『利子つきで返す』というアリア・ギアスでも積まれていないと、センエースから、力を奪うことなんて出来ない。奪われれば奪われるほど、あいつはどんどん膨らんでいく。センエースは、借金をしているんじゃない。むしろ逆だ。あいつは、ずっと、強制的に、全財産ブッコミ型の鬼リスク投資をさせられているみたいなもの」
「……弛まぬ努力で膨れ上がった可能性を、全ぶち込み型のストロングスタイル投資で雪だるま式に増やしていくのが、センエースのスタイルってことか……ヤバいな……最終的なセンエースは、どこまで膨らむねん」
などと、おしゃべりしているカミノと1002号に、
蝉原が、
「カミノに、一つ、聞きたいんだけど、1002号にぶちこんだ『閃くんがこれから積む予定のもの』だけれど……まさか、『全部』を積んだわけじゃないよね? 流石に、そんなことはできないよね?」
「当たり前だろう。『センエースが今後積み重ねていくもの全部』なんかをぶち込んだら、いくら『センテラスを内包している1002号さん』といえど、流石にパンクする」
「ふむ……つまり、セン君が稼ぐ予定の経験値の一部だけってことだね。なら、問題はない。たかが知れている」
などとナメたことを言いながら、
まるで『試すような武』を、1002号にあびせていく蝉原。
その一連を風雅に受け止める1002号。
明らかに、出力も戦闘力も底上げされている。
センエースの財産を投入されたことで、1002号はかなり強くなった。
だが、
「うん、やっぱり、脅威と呼べるほどじゃない。1002号は『根本の質』が低いから、いくら極上の経験値をぶちこんでも、たかが知れている」
「言い方腹立つなぁ、お前。ほんま、ずっと、腹立つわぁ」




