53話 ヤム〇ャぐらいの価値しかない元主人公たち。
53話 ヤム〇ャぐらいの価値しかない元主人公たち。
「1002号……これまで、ずっと、『ヌルを殺すために頑張れ』と言い続けている身でありながら何だが……ヌルをたすけるために手を貸してくれ」
「……なんや、もう、ようわからんけど……ぶっちゃけ、現状は、まあ、それしかない状況やろうな……」
と、ダルそうにそう言ってから、
両者は、蝉原を殺すために動き出す。
――途中参戦してきたカミノたちを、軽く対処していく蝉原。
そんな彼に、カミノは、
「悪いな、蝉原、『ヌルを裏切って殺せ』と要求しておきながらアレだが、お前を見てたら、なんかすげぇ腹立つから、ヌルよりも先に、お前を殺させてもらうぞ。まあ、でも文句はないだろう? 先に裏切って攻撃をしかけてきたのはお前だ。お前に食い破られた腹……いたかった……いたかったぞぉおお!」
と、絶妙なテンションで戦闘をこなすカミノに、
蝉原は、
「はは、いいのかい? 俺が死んだら、誰もヌルをとめられないよ? 俺に殺されかけたことは、いったん、水に流して、ヌルの方を攻撃した方がいいんじゃない?」
「ヌルが死んだら、お前を止められるやつがいなくなる。それはそれで大問題。……てか、まあ、正直、もうよくわからん。ヌルを殺すべきなのか、お前を殺すべきなのか……もうわからんが……感情論的には、お前の方が嫌いだから、お前を殺す」
「ははは。俺の嫌われっぷりは、本当に、大したものだねぇ」
楽しそうに笑っている蝉原の顔面に一発いれようと必死のカミノ。
しかし、蝉原はヒラヒラと舞うように、
全員の攻撃を華麗に回避していく。
ハッキリ言って、満身創痍のカミノたちは、クソの役にも立っていない。
『人造人間編のヤム〇ャ』ぐらい使い物にならない。
現状、一応、
『蝉原』
VS
『ヌル』『カミノ』『無崎』『天童』『セイバー』『1002号』
という構図ではあるものの、
実際の戦力図は、
『蝉原』
VS
『ヌル』
でしかない。
1002号は、ギリ、それなりに闘えているが、
ぶっちゃけ、ヌルに守られている感じが否めない。
ほぼほぼ、足手まとい……と言っても過言ではないレベル。
そんな状態の中、数十秒だけ、カミノは、普通に、ヌルや1002号のサポートをしていたが、
「ダメだぁあああ! 俺たち、弱すぎて、糞の役にもたってない! ほとんど、ただのお荷物! むしろ、邪魔な足枷の鉄球! くそがぁ!」
カミノが頭を抱えて、己の情けない現状を叫ぶ。
「くそ、くそ、くそ……こうなったら……しゃーねぇ……」
ギリリっと奥歯をかみしめてから、
「1002号! ちょっと地獄を見てもらうけど、いいか? OKだな! 助かる!」
「ザンクさん、なんも言うてへん」
「目を閉じて、リラックスして、歯を食いしばれ。意識を極限まで静謐に沸騰させるんだ! そうじゃないと秒で死ぬぞ!」
「唐突かつ無慈悲に、めちゃくちゃ難しい要求されとんな。今に始まったことやないけど。……何する気か知らんけど、文句言うても聞かんやろうし、素直に受け入れたらぁ。さすがに、この前みたいに『1000億年頑張れ』とかいうアホな指令ではないやろうし」
「俺が預かっている、オリジナルセンが積み重ねてきた1320億3万年を、お前の中にぶち込む! どうにか制御して力に変えろ」
「え、ちょ、そんなことして大丈夫なん?」
「気を抜いたら、カカロ〇トのエネルギーを食いすぎて爆発したヤコンみたいになるから、どうにかうまく折り合いをつけながら、なんとか気合いで抑え込め」
「具体的にやり方を教えてくれや。『どうにか』とか『なんとか』とか そんなゴミみたいな装飾がついとる発注書は承ってへんねん」
「がんばれ、ザンク。お前がナンバーワンだ」
「ちゃうねん。ナンバーツーやねん。ナンバーワンはお前の中におるから、そいつにオーダーしてく――」
「うらぁあ!」




