52話 何が正解?
52話 何が正解?
「君は、センエースに確実に殺されるために、徹底的に悪役をこなそうとしている……俺の推測、何か間違っているかい?」
「逆に、何か一つでも、合っているところがあるかなぁ、と探してみたが、ものの見事に、100%、間違っている。『野〇のび太』以外で、完璧な0点を取るやつを、初めて見たぜ。逆にすげぇな、お前」
などと話している間も、両者の攻防は止まっていない。
ずっと、削り合っている。
お互いにダメージを受け合っている。
――ただ、明らかに、ヌルの方が大きなダメージを受けている。
このままでは、いつか、確実にヌルが死ぬ。
――そんな、圧倒的にヌル劣勢な戦いを見ていたカミノたち。
ふいに、1002号が、
「カミノ、どうすんねん? そろそろ、ヌルが死ぬけど……それを黙ってみとく……で、ええんか?」
1002号の言葉に対し、カミノは、
曇った表情をゆがませて、
「……ぅ……ぬ、ヌルが実際のところ、どっちなのか、今のところわからん。……『センエースの性格』を念頭において考えた場合……仮に、マジで、世界の救済のために、ヌルが動いていたとしても、ヌルは、それを認めないだろう。ほんとに、センエースってのは、鬱陶しい……せめて、こんな時ぐらい、普通に、素直に聖人やってくれりゃいいのに……ちぃっ!」
センエースは、蝉原の発言を否定した。
しかし、カミノを逃がそうともしている。
「蝉原と一緒に、きわめて高度な『ひねくれている芝居』をこいている可能性もゼロじゃない! ヌルが危険なやつだってのは事実だし、蝉原の方は想像していた以上に仕上がっていて、普通にやばい。――これ、ほんと、何が正解だ。ヌルについた方がいいのか? それが本当に正解か? 全部を信じてヌル側に着いて、背中から刺される可能性は?!」
カミノは必死になって考える。
その間にもヌルはボコボコにされていく。
信じられないことに、蝉原はヌルよりも強い。
悩んでいると、セイバーが、
「決めた♪ ぼくちゃんは蝉原を殺すよ♪ 理由は、蝉原というカスのことが嫌いで、ほんとに、むかつくから♪ つまり、ヌルがどうとか、関係ないんだからねっ♪」
そう言いながら、満身創痍の肉体を引きずって、
ヌルの加勢にいこうとしている。
続いて天童が、
「蝉原を焚き付けておいて、その蝉原を背中から刺すってのは、道理に反する気しかしないが、まあ、道理とか、どうでもいいよな。そんなもんは、犬のエサにもなんねぇ」
その向こうで、
無崎は黙って蝉原の敵についた。
何を考えているかわからないが、闘志は燃えている模様。
――そんな彼らを見ながら、カミノは
「……はぁ……」
と、一度、深いため息をついてから、
「……何が正解か知らんけど どうせわからんなら、感情論的に『胸糞じゃない方』を選んでおいた方が精神衛生的には、まだマシか」
そうつぶやくと、
1002号の方に視線を向けて、
「1002号……これまで、ずっと、『ヌルを殺すために頑張れ』と言い続けている身でありながら何だが……ヌルをたすけるために手を貸してくれ」
「……なんや、もう、ようわからんけど……ぶっちゃけ、現状は、まあ、それしかない状況やろうな……」




