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49話 『ダークヒーロー』VS『ダークヒーロー』。


 49話 『ダークヒーロー』VS『ダークヒーロー』。


「うまいものを食っても、女を抱いても、山ほどの配下に傅かれても、俺の欲望は満たせない。倫理や道徳を重視する道では永遠に自由になれない。俺を真に満たしてくれるのは、壊れていく『他』を見つめている時。俺への恐怖が狂気を呼び、世界が永遠に混乱し、悪意が蔓延り、まともな奴らが無限に苦しむ。それを眺めている俺。最強というセーフティな特等席で、命が絶望する様をとことん味わい尽くす。それが俺の望み」


「まったく気持ちがわからない とは言わない。イケメンと美女の破局は確かに痛快だ。そういう『ゴミみたいな気持ち』が『悪人ではない普通のやつ』の中にあるのも事実。けど別にそういう気持ちを表に出し散らかすことが自由だとも、それができないことが不自由だとも思わないな」


「それってあなたのかんそうですよね」


「感想を言ってんだから、そりゃそうだろ。赤を見て赤だっていうことが論破になるとでも思ってんの?」


「ははは、君とのおしゃべりは楽しいねぇ」


 そう言いながら蝉腹は、ヌルの腹部にとびきりの膝をぶち込む。


 血を吐き出しながら、ヌルも蝉腹の腹部に零閃拳を叩きこむ。


 そうやって、互いに、重たい拳をかわしあう。

 一歩もひかずに、ノーガードで殴り合う。


 命の華が咲き誇る。


「……いいね。いい具合に拮抗しているよ。……これならいい感じに楽しめる。……とことんやって、キッチリと決着をつけよう、閃くん。君を殺し、喰らい、オリジナルのセンエースもサクっと殺し……俺は完全な俺になる。敗戦処理の役回りはもう終わりだ。ここからは、俺が主役になる」


「ダークヒーローの趣味をお持ちだとは思わなかった」


「ははは、ヒーローなんて、そんなダサいことやらないよ。俺は、ただ、全部をくらいつくす『純粋な闇』だよ。宇宙一のヤクザとして、この世界を徹底的に黒く染め上げるんだ」


「……悪人が、ただ悪いことをするだけの物語か。まあ、そういうあらすじも、需要はなくもなさそうだな……下手したら、オリジナルのセンエースが世界を照らす神話よりも人気を取れるかもしれねぇ」


「だろう? だから、閃くん。死んでくれよ。……あ、死んでくれとは言ったけれど、手を抜く必要はないよ。自殺してほしいわけじゃない。正式に、俺が、君を上回り、君を殺す。それで死んでくれ」


「……はは。ナメたコトをほざき腐り散らかしやがって。てめぇというピエロが無様に踊るだけの物語は、激しく滑稽で、特殊嗜好層の読者からの人気はとれそうだな。……けど、そんな安い人気取りは、俺の望みじゃない。俺はいつだって、俺のワガママを貫く」


「そうだろうね。不完全な出来損ないとはいえ、君も一応はセンエースだからね」


 適度に言葉を交わし合いながら、

 両者はボコボコと殴り合っている。


 1002号やカミノは、そんな両者を、

 『どうするべきか』という顔で眺めていた。


 手を出した方がいいのか、

 それとも、静観した方がいいのか、

 それとも、ヌルの言う通り、隙を見つけて逃げた方がいいのか。

 答えが見えずに戸惑っている。


 そんな彼らの視線の先で、

 だんだん、均衡が崩れていく。


 ヌルの方が、損傷が激しい。

 ボロボロになっていくヌルを見ながら、

 1002号が、カミノに、


「……これ……なんか……このままやったら、蝉原が、ヌルを殺してしまいそうやけど……それで、ええん?」


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