46話 狂愛のアリア・ギアス。
46話 狂愛のアリア・ギアス。
「ヌルは、『オリジナルオメガの慟哭』と、そんなオメガを追って『無限の呪いを受け入れたヒロインたちの痛み』を理解した。ミシャンド/ラの呪いや、アポロギスの呪い、アポロギスに命を捧げるはずだったシューリの呪い」
名前のをあげたヒロイン全員、『背負っている呪いのパッケージ』はすべて同じ。
『どんな目にあってもいいから、もう一度、愛する人に会いたい』
という強い願い。
――つまりは、狂愛のアリア・ギアス。
「すべての痛みを理解してしまったヌルは、どうにかして彼女たちを救いたいと考えた。『オメガの心残り』はともかくとして、『ヒロインたちを苦しめている呪い』を完全に解きたいと考えたわけだ。『ヒロインの呪いを受け止めたA型センエース』を死なせたら、また呪いが巡ってしまう。またヒロインがオメガを追って呪われる。ヒロインを救うためにはA型センエースを救わないといけない」
だが、それを果たせるだけの器がヌルにはなかった。
自分に、その器がないという事に、ヌルは大層悩んだ。
出来るなら自分でやりたいところだが、不可能だというのなら仕方がない。
ヌルは徹底的に考えた。
――どうすれば、全部の胸糞をぶっ潰せるだろうか、と。
「ヌルは、『セレナーデの呪い』を解くために、自分が贄になる道を選んだ。抽象的な言葉を全部なくすと、あいつは自分の命を代償にして、あまねく全部を救おうとしていた。自分がセンエースの餌になることで、センエースを真の8にして、世界の全部を救おうとしたんだ。『終焉の輪廻』も、『ヒロインたちの呪い』も、そういう『ヌル的にウザすぎる胸糞』全部をぶっ飛ばすには、『オリジナルに全てを注ぐことだけが唯一の解答であり最善だ』と判断した」
オリジナル・センエースだけが、『完全なる無限の存在』になれる可能性を持つ。
自分では器不足だから、絶対に不可能。
自分にできることは、養分になることだけ。
――それが、ヌルのファイナルアンサー。
「望む未来をつかみ取るためなら、自分が悪として処理されることも厭わない。それがヌルの視点。その証拠に、ヌルは全部をくらい尽くしたが、ヌルの中には全部残っている。『いずれセンエースに奪い返された時』のために『完璧な状態で保存』してある。そこまでの面倒事を背負うのは、相当にしんどいはずなんだが……実際、ヌルはずっと苦しんでいるが、ヌルは、まぎれもなくセンエースだから、その程度の苦痛で折れたりはしない」
そこで、蝉原は天を仰いで、
歯噛みしながら、
「嫌いだ。虫唾が走る。そういう、あいつの聖人性が本当に無理。挙げ句の果てには、その聖人性で俺を救い、俺にまで同等の聖人になることを求めた。気持ちが悪い。本当に無理。嫌い」
「……」
「ヌルは絶対に殺す。……ある意味で、世の中をナメくさっているあいつに、本物の『悪』ってのが、どういうものかを見せてやる。……カミノ……君を食い殺し、君の中にいるセンエースも俺のものにする。俺のものは俺のもの。君のものも俺のもの。俺のジャイアニズムは、ヌルのハリボテとは違い、極悪で無慈悲な本物の器」
そう言いながら、
蝉原は、カミノを喰らい尽くそうとする。
そうはさせないようにと、1002号と元主人公たちが、必死になって止めようとするのだが、
しかし、
「俺はオリジナルの蝉原勇吾だよ。キャラランク最高位のバケモノ……ソレの本物だ。……君らみたいな、出来の悪いパチモンの寄せ集めで、どうにかなるわけがないだろう?」
サクっと蹴散らされていく。
相手になっていない。
「ばいばい、カミノ。俺の鎖を断ち切ってくれたこと、心から感謝するよ。せめてもの礼として、一切の苦痛なく殺してあげる」




