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45話 転。


 45話 転。


「ログの書き換えなんてやったら、ヌルにバレるはずだ。できるはずがない」


「書き換えるなんてことをしたら、バレるにきまっている。だから、俺はそんなことはしていない。ニュアンスをいじって、印象を操作しただけ。報告書の形式に、独自の視点を入れる程度なら、問題視する上司は少ない。だから、正直な話、そんなに難しくはなかったよ」


 蝉原は、そこまで、タンタンと言っていたが、

 そこで、声の質を1オクターブ下げて、


「ヌルはバカだし……それに、ヌル自身が、センエース陣営に、自分を『悪』だと思わせるために全力を尽くしていたからな。センエースが、ヌルを殺すために全力を出せるように、ヌルは、全力で悪役を買った。ヌルの計画を知った時、『これなら完璧にことをなせる』と胸が躍った」


「……そ、それは、どういう……ヌルは……願い玉の闇に呑まれて、壊れて……世界を食い尽くすだけの破壊衝動になったんじゃ……」


「いいや。あいつは、勝ったんだよ。願い玉の闇に呑まれそうになって、けれど、ギリギリのところで耐えた。あいつは、出来損ないだが、しかし、間違いなく、センエースの因子を持っていた。それに、果たすべき責務があったから、耐えることができた」


「責務?」


「カミノ……お前は、『ソル』が、ヌル計画と同時に進行していたA型センエース・オメガ計画に関して、どれぐらい知っている?」


「プライマルメモリ・セレナーデの……『オメガの心残り』を清算・昇華することにより、センエースの中にある『不屈の魂魄』に革命の序章を起こす……みたいな、ふわっとしたことしか知らん」


「それだけ認識していれば十分」




 ・『A型センエース・オメガ計画の概要』

 リブレイ王国の侯爵令嬢『ノコ』は、『流行り病を治せる魔法』が使える。その魔法を使うたび、ノコは『年をとって』しまう。ノコは、自分の身をかえりみず、多くの人を救い、そして、老婆になっていった。国を救うために『年齢』を犠牲にした彼女を、婚約者である王子は、『醜いババアと結婚してたまるか』と罵った上で、濡れ衣を着せて殺してしまう。(※ これが、トコがかけられている呪い。どの次元でも、彼女は、地獄を背負うことが宿命づけられている。しかし、それは、彼女の自業自得。彼女が『それでもいいから、オメガにもう一度会いたい』と望んだ重たい業)。


 ノコに救われ、ノコを愛していた騎士の『A型セン・オメガ』は思う。愛する彼女を救う力が欲しい。その瞬間、彼の頭に『未来の記憶』が流れ込んできた。

 A型センは、『この日から死ぬまでの100年間』を100回繰り返していた。

 10000年間の中で、ありとあらゆる英知と力を身に着けたA型センは、ノコを蘇生させ、クソ王子から『若さ』を奪いとり、ノコに注ぎ込んで、彼女を元の姿に戻すと、そのまま、ノコを連れて国外逃亡するのだが、ノコは、クソ王子に殺された時に『死の呪い』をかけられてしまっていた。

 それを解くためには、A型センが、代わりに死ななければいけない(※ A型センの死は絶対である。ただ、A型センが死ねば、トコは、またA型センを追って呪いを積み重ねる)




「――ヌルは、もともと、A型センエース・オメガのバックアップ……の『一つ』だった。数あるバックアップの中で、一番出来のわるいやつを、『俺(蝉原勇吾)』の養分としてリサイクルした。『蝉原勇吾を完成させるための養分』……その義務を果たした上で、使えそうなら、A型センエース・オメガの養分としても再々利用する。……これが、ソルの計画だったが、センエース・ヌルは、そんなソルの想定を超えていった」


「……」


「願い玉の闇に呑まれそうになった時、ソレに抵抗できたことで、センエース・ヌルの意識はA型センエース・オメガと共鳴した。これは、完全にバグだった。タマ〇シシティでミ〇ウが釣れるってぐらいの次元のバグ。ヌルは、A型のバックアップだから、当然、同じコードが使われているんだが、どうやら、どっかで、フラグキャンセルの処理がうまくいかなかったらしい。もう、この辺の具体的な詳細については、俺もよくわからん。ただ、『俺』にとって、非常に都合のいい展開になったことは事実」


 蝉原の中にも、無崎の因子は存在する。

 つまり、蝉原の中にも『すべてうまくいく』が存在する。


「その結果、ヌルは、『オリジナルオメガの慟哭』と、そんなオメガを追って『無限の呪いを受け入れたヒロインたちの痛み』を理解した。ミシャンド/ラの呪いや、アポロギスの呪い、アポロギスに命を捧げるはずだったシューリの呪い。その全ての『業』を断ち切るための力を、ヌルは求めた。ヌルの最終的な結論は非常にシンプル。自身が『極限まで膨大な経験値』となり、オリジナル・センエースを真なる8に覚醒させること」



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