43話 蝉原は約束を守る男だ(棒)!。
43話 蝉原は約束を守る男だ(棒)!。
カミノの『ガラ空きの背中』を見た蝉原は、
ニィっと、黒く笑って、
――ほぼ、一瞬のうちに間をつめると、
ガバァアっと口を開いて、
カミノを丸のみにしようとした。
――が、寸でのところで、カミノは、それに気づき、
「ぬぉおおおっ!!」
グイイイっと体をひねって、蝉原の口撃を回避しようとした。
超絶技巧の緊急回避で、飲み込まれるのは免れたが、
しかし、下半身はグシャリっともっていかれた。
「ぐぅっ……っ……せ、蝉原、ちょ、おま……いやいやいや……っ! なにやって……っ!」
想定外すぎる蝉原の愚行に焦るカミノ。
カミノは、欠損治癒で回復しようとするが、
(蝉原の野郎……とんでもなく『凶悪な呪い』を込めて、俺の下半身を食い破りやがった……これは解呪するのにかなり時間がかかる……くそかすが……)
心の中で呪詛を吐きながら、
カミノは、追撃してこようとしている蝉原に、
「待て待て待て待て! ちょ、まじで! 蝉原、待て!」
上半身だけになっているカミノは、
背中に翼をはやす魔法を使い、
ヒュンヒュンと飛行回避しながら、
蝉原に言葉をなげかける。
「ストップ! 落ち着け!」
叫ぶが、蝉原は止まらない。
ゴリゴリにつめよって、カミノを喰らい尽くそうとする。
当然、それに抗うカミノと、カミノの援護に入る1002号。
「とまれや、蝉原。なにしてんねん」
1002号のラッシュを横からもらった蝉原は、
少しだけスタンしたが、
すぐに態勢をたてなおして、1002号との攻防を開始。
その間、カミノは、少しだけ距離をとり、
無崎を盾にしながら、
「蝉原ぁああ! 何しとんじゃい、ぼけぇ!」
「……俺は、別に、君の味方になったわけじゃないよ」
「そんなもん、わかっとるわぁああい! そんなことを言っているんじゃなく、なんで、ヌルを殺す前に、こっちに攻撃してんだって話だ! 俺らとお前で、ヌルを殺す! まずはそこからだろ! とにもかくにも、ヌルの討伐をバチコリ果たすことが最優先! 俺達の処理云々は、ヌルをきっちりと仕留めて以降の話だろ、ぼけぇ!」
「弟子たちだけでは心もとないから、君の中にあるセンエースとトウシもくわせてもらう。そこまでやれば、さすがにヌルを倒せるはずさ。というわけで、カミノ……俺に食われろ」
「イカれたことぬかしてんじゃねぇ!」
「何もおかしなことは言っていないと思うが? それとも、まさか、『不完全な俺』と『ヌル』を争わせて、疲弊させたところで、漁夫の利を狙う……そんな作戦だったってわけでもないだろう?」
「……ぅ」
「心配しなくとも、ヌルを殺したあとは、返してあげるよ。俺は約束を守る男だ。というわけで、さっさと俺に食われてくれ。もたもたしていると、ヌルが復活してしまう」
「蝉原……心配しなくても、俺達とお前が手を組めば、ヌルを抑えつけることは可能だ。仮に、俺らだけで処理できなくとも……俺たちがやりあっている間に、センエースが完成する。あいつは、もう、病的な高潔の裏スペシャルまでは届いているんだ。あとは、もう少しだけ時間をかけて成長させれば問題は――」
カミノがぺちゃくちゃ喋っている間、
蝉原は、心の中で、
(……ヌルが復活するまで、まだだいぶ残っているな。超苺と酒神の可能性にビビりすぎて、対処を焦りすぎた。超苺はともかく、酒神を食べるのには、もう少し時間をかけるべきだったな。……しゃーない……おしゃべりで時間を稼ぐか……)




