41話 蝉原をナメた代償。
41話 蝉原をナメた代償。
「――無崎の因子なら、俺も持っているんだよ。なんせ、『俺(蝉原勇吾)』は、『周囲の人間が無崎に抱いている印象』をベースにした『悪童』だから」
センエースは、プライマルメモリの主人公たち全員のタスキを受け取った光。
対して、蝉原勇吾は、プライマルメモリの暗部を煮詰めて仕上げた重たい闇。
センエースが背負っているものの大きさは言うまでもないが、
蝉原勇吾が背負っているものも、サイズだけで言えば負けていない。
ゆえに、蝉原は、ほとんど苦戦することなく、
超苺の腹部を貫いた。
ズブリと臓物をひねりつぶす感覚が腕に響く。
「超苺……『お前が持っている無崎の因子』を仮に5点だとすると、俺のもっている無崎の因子は3点ぐらい。お前のものより、俺の方が、所詮は幻影でしかない分、薄いのは事実だが……しかし、そこまで大きな差があるわけではない。だったら、存在値で大きくアドバンテージのある俺が勝つのは道理」
などと言ってから、
蝉原は、バクリと、超苺を奪い取ってしまった。
「はっはぁあああっ! なんだかんだいって、結局、やはり、超苺が一番でかいなぁああ! 適合していく! 膨らむ、膨らむぅうう!」
超苺を奪われるシーンを目の当たりにしたクロートは、
「あ……ぁ……」
絶望で震えていた。
他のメンツはともかく、超苺だけは、『そう簡単に負けないだろう』と、どこかで思っていた。
超苺なら、なんだかんだ、どうにかしてくれるだろう、
と、そんな『強い信頼感』をたやすく打ち砕かれて、放心してしまうクロート。
動けなくなっているクロートに、
蝉原は、
「クロート。お前は何もかもが微妙だったが……絶望に染まる表情だけは、なかなかどうして一級品じゃないか」
と、最後に、そんな感想を述べてから、
バグリと、クロートを丸のみしていく。
『まともな弟子』を全員飲み込んだ蝉原は、
最後に、『まったくまともじゃない弟子』である酒神に視線を送り、
「良い目をしているな、酒神。さすが、クロートとは出来が違う」
虫ケラを見る目を崩さない酒神は、
武を構えて、
「……クロートやデビナ程度のカスをいたぶってうれしいでちゅか? 正直、なんの自慢にもなりまちぇんよ。『あの超苺ですら秒殺できた』というのは、確かに、ちょっと驚きまちたけど、でも、あんた程度では、絶対に、お兄には勝てまちぇん」
ハッキリと断言しつつ、
蝉原に対して圧力をかけていく。
酒神は、弟子の中では間違いなく最強。
別格の存在値を誇るスーパースペックの持ち主。
それは間違いない。
事実、これまでの誰よりも蝉原にダメージを与えている。
しかし、そこまでが限界。
蝉原に勝つことは出来ない。
時間がたつにつれて、酒神の損傷が増していく。
対する蝉原は、無傷でこそないものの、まだまだ余裕の表情。
「流石に、酒神シリーズの因子を持つだけあって、まあまあの力だね」
蝉原は、優雅に、酒神を評価しつつ、
「とはいえ、流石に『薄すぎる』かな。俺の無崎性よりも、さらに薄い。ヌルの感情ブースターとしての役割以外を期待されていない、出来損ない用のハズレヒロイン。……『ゴリゴリの酒神シリーズ』が相手だと、流石の俺でも多少は苦戦するだろうけれど……お前は所詮、出来の悪いお人形さんだ……俺どころか、あそこにいる元主人公たちよりも精度の低い、隠し味程度の極小フラグメントしか持たない、ガワだけの、安いハリボテ」




