40話 無崎の因子。
40話 無崎の因子。
蝉原の鎖を解き放ったカミノは、『弟子たちをボコボコにしていく蝉原』を見ながら、
(……よし……計画通り……)
と、黒い笑顔を浮かべていた。
カミノの計画の要は、1002号と蝉原の二人。
『強くなった1002号』と、『弟子を喰らい尽くした蝉原』のタッグを、ヌルにぶつけて、出来る限り、センエースを鍛えるための時間を稼ぐ。
――これが、カミノの作戦。
蝉原と弟子を共食いさせることで、ヌルの戦力を根こそぎ減らすことが出来るという、一石で十鳥以上の利益を取ることができる理想の作戦。
蝉原が、ヌルにビビらず、ちゃんと裏切ってくれるかどうか、
そこだけが賭けだったが、
カミノは、このギャンブルに勝った。
(蝉原では、いくら、弟子を喰らい尽くしたとしても、ヌルには勝てないだろう……だが、それでいい。ヌルと蝉原で、少しでも削り合ってくれれば、それで、こっちとしては十分。『完全な状態の蝉原』と『1002号』の両方を相手にすれば、流石のヌルさんと言えど、疲弊は免れない。あとは、疲弊したヌルを、『完成したセンエース』が処理すれば……世界の脅威は終わる。ヌルという『壊れた破壊衝動』を処理して、俺はニコトピアを取り戻す。……それで、ハッピーエンドだ)
1002号や元主人公たちのサポートもあり、
蝉原は、サクサクと、弟子たちを殺していく。
弟子たちは、言うまでもなく、全員、それなりに強く、
ゆえに、当然、普通に苦戦した……ものの、
しかし、結果的には、
「ぐ……くそったれっ……くそったれぇええ!」
ボロボロのデビナは、最後に憤怒を叫びながら、蝉原に突貫した――が、蝉原は、
「前陣速攻のパワータイプは、同格同士の闘いでは、そこそこ有用だが、俺とお前ぐらい存在値に差があると、『もっとも処理しやすいザコ』でしかないな」
デビナの攻撃をさらっと回避して、
彼女の首に、ザクっとカウンターを入れていく。
バキリと、首をへし折ってから、
「もらうぞ、デビナ」
ペロリと、デビナを丸のみしていく。
デビナを奪い取った蝉原はさらに大きくなっていく。
現状、弟子チームで残っているのは、
酒神と、超苺と、クロートだけ。
マリと12345とアズライルとアルブムはすでに食われている。
壊滅状態を目の当たりにしたクロートは、
ギリギリと奥歯をかみしめながら、
「超苺! 酒神! あとは、お前らだけが頼りだ! 全力でサポートするから、どうにか蝉原を殺して、全員を奪い返してくれ! このままじゃ、陛下に顔向けできない!」
蝉原の弟子――ヌルの配下の中でも、
酒神と超苺は飛びぬけている。
プライマルヒロインシリーズの酒神。
『それなり』に無崎因子を持つ超苺。
どちらも背負っているものがエグい。
ゆえに、蝉原でも、この二人を処理することは難しい。
そう思っていた時期が、クロートにもありました。
しかし、
「――無崎の因子なら、俺も持っているんだよ。なんせ、『俺(蝉原勇吾)』は、『周囲の人間が無崎に抱いている印象』をベースにした『悪童』だから」
センエースは、プライマルメモリの主人公たち全員のタスキを受け取った光。
対して、蝉原勇吾は、プライマルメモリの暗部を煮詰めて仕上げた重たい闇。




