33話 膨らんでいく敵勢力。
33話 膨らんでいく敵勢力。
「陛下がすごいのは当然だけどよぉ、でも、流石に、蝉原の今の力があって、ザンクのパチモンにやられるのはダサすぎねぇか!? マジで、どんだけ無能なんだって話だぜ!」
「もう嫌いっていうか、死んでほしいんやけど。顔見るだけで吐きそう」
デビナとアズライルが、心底から軽蔑しているような声でそう言うと、
そこで、メイド姉妹の姉が、
「みんな、それまでにしてあげてほしいにゃ♪ 師匠のライフは0よ♪ もう、生きる気力を失って手首を切りかねないくらい傷ついているのにゃ♪ 終わっているとか、終わっていないとか、そういう次元じゃないレベルで死んでいる彼の死体を、そんなに蹴らないであげてほしいにゃ♪ かわいそうすぎて見てられない♪ あんなにも、ボロボロで、惨めで、みっともなくて――」
その言葉に、メイド姉妹の妹が、みけんにしわをよせて、
「姉貴、どう考えても、あんたの死体蹴りが一番激しいぜ。さすがに、マジで勘弁してやってくれ。1002号は、ゴリゴリに、ハンパ無い実力の持ち主だ。アレに負けることは、そこまでの恥だとは思えねぇ」
そんなメイド妹の言葉に、弟子の中で最も頭がおかしいギャルが、
「いや、普通に恥だとおもいまちゅけどねぇ。パチザンクは、『お兄のナンバーと異次元同一体の因子』をもっていながら、一回は、蝉原に負けているわけでちゅからねぇ。ガチお兄なら、蝉原ごときに負けるなんて、どんな状況でもありえまちぇん。そんな、ハンパなパチモンにリベンジ戦で負けている蝉原。どっちもゴミと言わざるをえまちぇん」
ザコすぎる蝉原に嫌悪感を見せている弟子と、
1002号のハンパなさに注目している者の割合は、
ちょうど半々だった。
しかし、それは、『人間性が終わっている蝉原』に対してのマイナス感情が、各々強すぎるというだけであって、実際のところ、ここにいる弟子全員が、口では色々と言っていながらも、1002号に対して、強い警戒心を抱いている。
それぞれ、好き放題を口にしつつも、
シッカリと、魔力とオーラを練り上げて、
完全戦闘態勢へとダイブしていく。
そんな中で、
蝉原が、
「君たちが俺のことをどう思っているか……そこのところに関しては、正直、どうでもいいけど、『変な油断だけはしないでほしい』とだけ言っておくよ。1002号も、カミノたち元主人公も、なかなかエゲつない力を持っている。ちゃんと、全員で協力して……陛下がかえってくるまでの時間を稼ごうじゃないか」
そんな師匠からの指令に対し、
弟子たちは、まったくもって返事を返さない。
デビナたちは、間違いなく蝉原の弟子なのだが、
しかし、誰も、蝉原のことを慕ってはいない。
蝉原に対する感情は、『嫌い』か『超嫌い』の二択しかない。
「あ、ちなみに言っておくと、先ほどの1002号との闘いの中で、カミノにハックをかけて、クロートと超苺の因子を回収しておいたよ。これは、なかなか凄いことだと思うんだけど、それに関してはどう思う?」
そう言いながら、
パチンと指をならすと、
追加でジオメトリが出現して、
その奥から、
クロートと超苺が出てきた。
それを見ながら、カミノは、
一瞬だけ、蝉原に触れられたことを思い出し、
「あの時にスったのか……気づかなかったな……」




