30話 蝉原の狙い。
30話 蝉原の狙い。
――ここにいる人材の中で、『まともな倫理観を抱いている』のは、
セイバーリッチと無崎だけ。
※ その二人だって、相対的には『まっとう』に見えなくもない、というだけで、完璧にまともな存在ではない。
『カミノ、天童、1002号、蝉原』――こいつらは、倫理観という視点でいうと、全員、もれなく、ちゃんと終わっている。
「……カミノが死のうが生きようが、ぶっちゃけ、どうでもええんやけど……今、この瞬間だけは、死なれると、戦力低下という意味でウザいから、殺さんといてもらえる?」
そう言いながら、1002号は、蝉原のムーブを、真横から、力技で対処する。
蝉原は、どうにか、『一瞬、カミノに触れること』だけは出来たが、
『カミノにダメージを与える』といったコトは一切できず、
そのまま、1002号に横腹を蹴り飛ばされて、豪快に吹っ飛ぶ。
すぐに態勢をたてなおした蝉原は、1002号を、軽くにらみながら、
「――なるほど。君の中には、1001号のカケラと、テラスのカケラが刻まれているのか。1001号は、死に際に、俺からテラスを奪い、君の中に仕込んだって感じかな? いやぁ、キヅカナカッタナー」
(なんや、その嘘くさいセリフは……まさか、気付いとったんか? ……マジで、全部わかった上で、『泳がされとった』ってこと? なんで、そんなことを? なんの意味が……)
蝉原と激闘を繰り広げている最中も、
頭の中では思考が止まらない1002号。
(見えへんな……蝉原の真意……)
と、蝉原の真意を完全に見失って迷子になったところで、
1002号は、自嘲気味のタメ息をついて、
(蝉原勇吾を理解しようやなんて、どだい無理な話か……こいつは、潜在能力だけで言えば、センエースや田中トウシに匹敵する器……ザンクさんごときに測れるようなタマやない)
と、考えることを放棄したタイミングで、
蝉原が、
「ちょっと前まで、しっかりとゴミだったのに、ずいぶんと大きく膨れ上がったねぇ。いくら、1001号のバックアップと、テラスのカケラをもっているからといって、それだけでは届かない器……俺との対話のあとで、君は、何をしていたのかな?」
「……単純な話。センエースがカミノと1000億年を積んどった裏で、ザンクさんも、延々、修行にあけくれた」
――センエースとの闘いの中で、『カミノ』は、『多く』を積んでいた。
その中の一つが、1002号。
『無限ゾンビアタック』を仕掛けてくるセンエースを対処するため、カミノは、ありとあらゆる手を尽くした。
使えるものは全部使おうと、世界中、くまなく探しつくしたカミノは、1002号の可能性に目をつけた。
『センテラス(センエースの異次元同一体)』を内包している1002号なら、センエースが使う『銀の鍵』の影響の範囲内におさめることができるのではないか。
そう考えたカミノは、お得意のチートをフルブッパして、ちょこちょこっと、1002号をバグらせて、センエースが銀の鍵を使った際に、1002号も『記憶とタイムリープボーナス』を過去の自分に引き継げるようにした。




