27話 ここまでは、カミノのシナリオどおり。
27話 ここまでは、カミノのシナリオどおり。
「ちょっ……まっ……待って――」
1002号と比べて、オリジナル・ザンクは、『マジの絶望を乗り越える』という経験値が決定的に不足している。だから、対応できない。存在値5000兆。すごい数字だ。けど、だから、なんだ?
「待ってあげなぁああああい!」
聖天無神は、無慈悲を叫びながら、
ギリギリのところで、封印にレジストをかましているザンクの顔面に、
「――メギドグリムアーツ・セイバーゼノリカレント!!」
セイバーリッチが得意としている技を叩き込む。
聖天無神の中では、最強格の一撃。
数値的にはものたりないが、
しかし、積み重ねてきた覚悟が、
数値をないがしろにしていく。
「どぐぇえええええっっ!!」
渾身の一撃をくらい、
抵抗力を見失うザンク。
そのまま意識を失って、
バシュっと、普通に封印されてしまった。
その様子を見届けた聖天無神は、
「……やった……いけた……いけたよな……大丈夫だよな……よし……よしっ!」
と、今度こそ、ガチでガッツポーズ。
そこで、合体が溶ける。
元主人公たちは、その場に倒れこみ、
「しんどかったぁ……やばかったぁ……」
と、歓喜に震えつつも、体力の限界の中で息を切らす。
――そこで、
「オリジナル・ザンクを、こうも簡単に処理してしまうとは……すごいね。ははは。普通に、笑っちゃったよ」
また、新手の声が響く。
『とことん性根が終わっている』と一瞬で理解できる声音。
そんな『新手のヤクザ』に対し、
カミノは、
「よぉ、蝉原……待ってたよ」
と、まっすぐな目で言う。
「俺という最大級の脅威が、ここで登場することも読んでいたって? さすが、ヨミの深さだけでいえば、世界一クラスだね、カミノ・キメラ」
そんな風に、軽やかに、
けれど、芯に響く圧力をかけてくる蝉原。
微笑を浮かべているが、その笑みは、とことん冷たく、
まるで、
『心の底では、絶対に笑っていないんだからね!』
と、叫んでいるみたい。
あえて、ツンデレ風の極端さを前面に出すことで、
『もしかしたら、本当はいい人なのでは?』
と思わしてきながらも、しかしそれすらワナで、
実際のところは、マジで普通に、ちゃんと悪人という、
どの角度から見ても、ガチでちゃんとしんどいタイプのヤクザ。
登場するたびに、どんどん、風格が跳ね上がっていく蝉原。
彼の底知れない悪意と、暴力性は、決してファッションではない。
残虐で、冷酷で、凶悪で、非道。
そんな、『ごうごうと燃えるような害悪さ』を、ほぼ完璧に制御して、ヤクザとしての品位と格式を底上げしている、ある意味で、とても純粋無垢な修羅。
道徳や倫理観という概念に対し、真っ向から歯向かっていくスタイルの、真にニヒルでダーティな、『反社会的勢力という概念』の粋を集めた、悪の権化。
そんな、怪物に、
カミノは、とてもまっすぐな目で、
「……お前に提案だ、蝉原」
『センエース・ヌルを相手に全力で時間を稼ぐ』と決めた時から、ずっと練り上げていた作戦を実行にうつす。
「……ヌルを裏切れ」




