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18話 勝てんぜ、お前は。


 18話 勝てんぜ、お前は。



 現実を受け止めたギャンバルは、

 圧縮された時間の中で、自分の人生について考えた。

 頑張って上を目指している時は濃密だったが、

 ここの警備を任されるようになってからは何もなかった。


(……は……はは……走馬灯、みじかっ……)


 自嘲する。

 情けなさ過ぎて涙が出た。

 それでも、


「……だ、だれか……たすけて……」


 『死にたくはない』と思ってしまった。

 ギャンバルは、どこまでも人間だった。


 救いの声が天に届くことはなく、自分はこのまま死んでしまうのだろう。

 そう思っていたのだが、




「――ラスト一匹、発見」




 そんな声が、ギャンバルの耳に響いた。

 声の方に視線を向けてみると、

 10歳ぐらいの少女が、空間魔法に風穴を開けて、中へと潜入してきていた。

 背後には、3歳ぐらいの少年を引き連れている。


 年端も行かないガキ二人の登場に対し、

 ギャンバルは、最初、反射的に、大人としての最低限の見栄を張ろうと、


「に、逃げろ! ここにきてはいけない!」


 と、叫んだ。

 正義感とかではなく、本当に、ただの見栄。

 『ガキを前にした時の大人の見栄』は、時に、『限りなく透明に近い勇気』と類似する。


 そんなギャンバルに、少女は、


「だいぶボロボロにされているようだけど、まだ死んではいないようね。よかったわ」


 と、そう言ってから、剣を抜いて、


「もう、心配する必要はない! 私は、未来の10つ星冒険者チーム、ガットネロの絶対的リーダー、レミングウェイ・カティ・デステニィ! いずれ、世界最強の英雄になる女! あの程度のアンデッドは、問題なく排除できるわ」


 彼女の名前には聞き覚えがあった。


(……デステニィ……その名前……フェイトファミリーか……なぜ、裏の人間が冒険者チームを……い、いや、そんなことより――)


 ギャンバルは、痛む体にムチを打って、


「ただのアンデッドじゃない! ソウルリッチやヴァンパイアなんかとは格が違う! 神級のバケモノだ! 複数の10つ星冒険者チームで、討伐部隊を組んで挑む必要がある難敵! 君の勇気と度胸は認めるが、今は生き延びることと、この脅威を、国の中枢に伝えることを最優先に――」


 などと、必死になって、『カティがすべきこと』を説こうとするが、

 しかし、カティは、そんなギャンバルの言葉を完全にシカトして、

 堂々と、死羅腑の前に立つ。


 死羅腑は、


「そこの小娘。まさか、この私と戦うつもりか?」


「ちがう。きさまを殺すつもりだ」


「……ふっ。バカが」


 死羅腑は、一度、カティをバカにしてから、


「私に勝てる者など、この世に存在しないのだよ!」


 不遜を叫んで、カティを殺しにかかった。


 その躊躇のないムーブを見て、ギャンバルは、

 カティの死を確信した。


 ああ、確実に死んだ――そう思った直後のこと。


 カティは、死羅腑の攻撃を、優雅に回避して、

 そのまま、カウンターの一撃を叩き込もうとした。


 その動きは、死羅腑に見えていたようで、

 カティのカウンターは、空を切った。


 豪速のやりとりを経て、

 両者は、


「ほう、なかなか悪くない反射神経をしているな、小娘」


「あんたは、『外で暴れていたドラウグルども』とは、ちょっと違うみたいね」


「私の配下である『エターナルコール・ドラウグル』たちをどうした? 殺したのか?」


「ええ、全滅させたわ」


「ほう……素晴らしい実力だ。悪くない」


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― 新着の感想 ―
瀕死のギャンバルさんが逃げろ!と叫ぶところも、 グッとくる人間性で最高でした。
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