21話 水分が足りない砂の城。
コミカライズ版センエース、9話配信記念!
一日10話投稿!!
9話目!
21話 水分が足りない砂の城。
セイバー天童が、カミノ無崎の胸に手をあてて、
「アマルガメーション!!」
宣言すると、カっと光る。そして、その光が落ち着いた時、そこには、合体戦士×合体戦士という、とんでもない状態のバケモノが立っていた。
「セイバーと、天童と、紙野と、無崎が合体して……なんだろうな……こうなってくると、名前を考えるのもダルいな……もう、全員の頭文字をとって『聖天無神』とかでいいや」
と、つぶやくと、心の中で、セイバーが、
(紙野の『かみ』を『神』で扱うのかよ。それはどうなんだ?)
(いいんだよ。もともと、『神の創造』っていう意味でつけられた名前っぽいから。……それに、紙だと、一人だけ、しょっぱくて、なんかヤなんだよ)
などと、どうでもいい対話を脳内で繰り広げている間、
『聖天無神』は、魔力とオーラを、ギュンギュンに練り上げていく。
心の中で、天童が、
(やはり、オーラと魔力を、うまく扱えない……『水分が足りない砂の城』みたいに、かためようとしても、バラバラにこぼれていく……)
続けて、セイバーが、
(共鳴融合がすごいスペシャルなのは間違いないけど、流石に、4人合体を支えることはできなかったね♪ あーあ、どうすんのよ、カミノきゅん♪ この責任、どうとってくれる感じぃ♪)
(うるさぁあああい! 他人に責任を求めているヒマがあったら、黙って集中しろ! 見ろ、無崎を! ずっと、黙々と頑張ってんぞ! お前らとはえらい違いだ! さすが、無崎は格が違った!)
セイバーと天童がぶちぶちと文句を言っている横で、
無崎は、何も言わず、ただ、黙って、黙々と作業を続けている。
(……)
別に、言いたいことがないわけでもないのだが、
何も代案を出せない以上、文句を言うのもどうだろう、
という、極めて正常な思想のもと、
とりあえず、自分にできる全部をやろうとしている。
と、そこで、カミノが奥歯を強くかみしめてから、
(集中しろ! とにかく、一発だけでいい! この一発に全てをかけるんだ!)
真摯な指令を出すと、
セイバーと、天童も、黙って集中を開始した。
全員で心と力を合わせて、どうにか、一つの魔法を完成させようとする。
全身全霊。
『気をぬけば、すぐに、バラバラにほつれていく』魂を、ギリギリのところで、どうにか、こうにか、つなぎあわせて――
「できたぁああああ! 行くぞぉおおお!」
たった一つの魔法を完成させる。
『合体戦士・聖天無神』は、両手をヌルに向けて、
「くらいやがれぇえええ! 『ナイトメア・トゥインクル・EZZパニッシャー』!!」
極大の出力が込められた封印魔法が、ヌルに襲い掛かる。
そこらのザコなら、コンマ数秒たりとも抵抗できず、かつ、何をしようと、永遠に抜け出せないレベルの封印魔法。
そんな、聖天無神渾身の封印魔法に、ヌルは、
「……吐くほど出来が悪い封印魔法だな。合体×合体だと、こんなにも粗悪になるものか」
別に、ナメているわけでも、バカにしているわけでもない。
ただの素直な感想。
園児が描いた絵を見て『下手』だと思うのと同じ。
『頑張って描いたこと』を『すごいね、えらいね、がんばったね』と全力で褒めることはあっても、『心の底から上手いと絶賛すること』はありえないと言った感じ。




