11話 センエース・ヌルは、とことん、チート。
11話 センエース・ヌルは、とことん、チート。
「俺は、ヘブンズキャノンを自由に使えるが、ヘブンズキャノンの『個々の個性』まで自由にできるわけじゃない。『俺が受けたダメージの分だけ、翠龍壱色の火力が上がる』という個性まではいじれない。出来れば、そこの部分もチート化して、『ダメージを受けていないのに、最大ダメージを受けた時の火力を出せる』というインチキ状態にしたいんだが……それは、さすがに、まだ出来ない。あくまでも、まだ出来ないだけで、いつか掌握してみせるが」
さらに暴露のアリア・ギアスを積んでいくヌル。
情報を与えてしまうことよりも、カミノを押しつぶすための火力を優先した。
ヘブンズキャノンの質量が、どんどん底上げされていく。
ただでさえ凶悪な兵器が、どんどんブラッシュアップされていく。
「奪い取れ、翠龍壱色」
ヌルの命令にしたがい、翠龍壱色はうなりをあげた。
腹の底に響く咆哮をあげて、強烈な『翡翠色のレーザー』を放つ。
ビビビビビビビビビっと、10本以上の光線が連続で放たれる。
そのレーザーは、あまりにはやすぎて、カミノの目ではまったく追えなかった。
ゆえに、気づいた時には、アバターラたちの頭がまとめてふっとばされていた。
恐ろしい速度と威力。
本体カミノだけは、頭ではなく、腕を狙われた。
『アバターラなら殺せる火力』だが、しかし、『本体の首を取れる火力ではない』――そう判断したヌルは、首へのダメージ蓄積よりも、部位破壊を優先した。
「ぐぅううっ!!」
『敵の腕を吹っ飛ばす』のは、高次戦闘におけるセオリー。
吹っ飛ばせるときは、できるだけ吹っ飛ばしておいた方がいい。
『腕がなくとも、心が正しい形を成せば、祈りは届く』
それもまた真理ではあるのだが、
……まあ、でも、やっぱり、腕はあった方がいい。
あった方がいいものを失うのは、当然、大きなディスアドバンテージ。
翠龍壱色はとまらない。
カミノの右腕を吹っ飛ばした直後、続けて、ビビビと、連続で三回発射。
結果、カミノは、ほんの一瞬で、両腕両足を失って、その場に倒れこむ。
「ぶへっ!」
あまりに早すぎる手足の消失に、思考がついていかない。
腕がないので、体を支えることも当然できず、下手な飛込競技みたいに、胸と顔を、ダイレクトに、地面へとたたきつけてしまう。
「ぐっ……上エックス、下ビー、エルワイ」
即座に、『欠損治癒』の魔法で、両手両足を再生させようと、
デバッグコマンドを使おうとするが、
そんなカミノを尻目に、
ヌルは、
(禁止魔カード、強制使用。――『だるまさんがころんだ』――)
心の中でつぶやきつつ、
右手に出現させた禁止魔カードをビリっと破り捨てる。
すると、
「アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、0000239――欠損治癒ランク1000――ん? は、発動しねぇ……なんで……」
そこで、カミノは、自分の『奥』を探ってみた。
その結果、『気持ちの悪い呪縛』のようなものに絡みつかれているのに気づいたカミノは、ギリっと奥歯をかみしめて、
「ヌル、てめぇ……『だるま』を使いやがったな……」
「願い玉の闇と融合している俺にとって、禁止魔カードは、パッシブスキルみたいなもの。いつでも、どこでも、無詠唱でも、自由に使える」
とことんチートな存在。
それが、『センエース・ヌル』という異常事態。




