9話 『チートを巧みに使う者』VS『存在そのものがチート』
9話 『チートを巧みに使う者』VS『存在そのものがチート』
「一生、くらいついてやるからな! あえて、言っておく! 圧倒的主人公補正なんかなくても、俺は無敵で不死身なんだよ!」
「慌てて必死に、暴露を積んで補強しないと保てない程度の器。チートの精度がハンパじゃないから、簡単には完全消滅までもっていけないだろうが……ゴリ押ししていれば、いつかは壊せる。確実に」
――ヨミの精度で言えば、間違いなくカミノの方が上。
上か下かを議論するのがバカバカしいだけの差がある。
素人と永世名人が互先でやりあっているみたいなもの。
当然、カミノの方が有利に盤面を整えていくのだが、
カミノが『知性』で整えた盤面を、ヌルは『(物理)』で荒らしていく。
カミノが、どんなに丁寧なうち回しをみせても、
大事な布石を、物理で叩き割られてしまえば、
当然、勝機というものが霧散していく。
しっかりヌルに追い詰められてきたカミノは、
額に汗を浮かべつつ、心の中で、
(反則は俺の専売特許だってのに……てか、こっちはずっと、チートばっかり使ってんのに……俺の『チート』を、鼻で笑うような、チート級の異常脳筋で荒らされる……)
チートを巧みに使う者。
VS
存在そのものがチート。
そんな二人の闘いが加速していく。
まだまだ、どちらも体力は残している。
どっちもチーターなので、ある程度、泥沼化するのは仕方ない。
とはいえ、終始、ヌルが優勢。
さすがは、存在そのものがチート。
闘いの中で、カミノは、
「ぐっ……流石、センエースと田中トウシを潰しただけのことはある! てめぇは強い! 認めてやる! くるしゅうない!」
などと、強がりを叫びつつ、
全力で、全身のオーラを充満させる。
ググっと、深みと厚みが出る。
陰影が濃くなって、コントラストがハッキリする。
「「「「「「「「「「「上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、G0001002――『神速閃拳』――」」」」」」」」」」」
アバターラも含めた全員で、
八方から、逃げ場のない『最速のコンボ始動技』を叩き込もうとした。
それに対して、ヌルは、
「――予備動作が少ないことが最大の特徴の技なのに、そんなに長く詠唱したら、本末転倒だと思うが……」
非常に美しいバニッシュムーブ。
本体カミノの背後にまわって、
容赦なく、首裏の切断を狙っていくヌル。
一貫している、急所へのゴリ押し。
バカの一つ覚えだが、しかし、結局、これが、一番強い――という見方もなくはない。
決して、『完全なる最善手』とは言えないが、
しかし、決して愚策ではない。
少なくとも、カミノには、なかなかの精度で効いている。
「ずぐぅうっ!」
また、意識が飛びそうになる。
もし、『ニコトピアを守りたい』という断固たる決意がなければ、そのまま気絶していただろう。
――大事なものを抱えている者の人生は不自由で重たい。
だが、その重さは、過酷な鉄火場において、最大級の支えとなる。
「ふんぬらばぁあああああっ!」
シャウト効果を最大限に活かすカミノ。
雑念をかき消す叫びで集中力を高め、筋肉と精神のブレーキを解除。
全身全霊で、ヌルと向きあっていく。
「「「「「「「「「「「上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、6059852!!!」」」」」」」」」」」




