8話 俺は、センエース・ヌル。悪威(あくい)の桜華(おうか)を背負い舞う閃光。
8話 俺は、センエース・ヌル。悪威の桜華を背負い舞う閃光。
『雷邪零神拳』を、まともにくらったカミノは、脳天からつま先まで、ビリビリビリィっと痺れてしまう。
その隙に、ヌルは、右腕にオーラを込めながら、
「虹を集めた虚空。玲瓏な蒼穹。幻想の戒光」
と、早口言葉の世界記録に挑戦しているような速度でコールを開始した。
――それを感じながら、痺れているカミノは、
「ぐ……ぐぅ……っ」
どうにか、動いて、コールを止めようとする、
が、
「貫くような銀河を見上げ、煌めく明日を奪い取る」
しびれが強すぎるのと、
コールが速すぎるので、止めることが出来ない。
(麻痺がエグすぎて、オーラドールをコントロールできない……や、やばい……っ……でかい一撃がくる……とめる……できる? ――むり……止められない……っ)
カミノ・アバターラのスペックを底上げするため、
自律型ではなく、コントロール型にしておいたのがあだになる。
普通なら、大量のオーラドールを制御しながら闘うことなど不可能だが、カミノの盤上支配力なら、それが可能だった。
不可能を可能にできる力は、時に、裏目を引くことがある。
世界は、いつだって、不条理に包まれている。
「さあ、詠おう。詠おうじゃないか。たゆたう銀河を彩りし、オボロゲな杯を献じながら――俺は、センエース・ヌル。悪威の桜華を背負い舞う閃光!」
ギィイイイイイイインッッッ!!
と、気血が沸き上がり高まっていく音が響き渡った。
ブチ上がっている。
全身を満たす、凶悪な量のオーラと魔力。
その全てが、右の拳に集まっていく。
高まって、高まって、高まっていく。
結果、
「――零閃流究極超神技、龍閃零崩拳――」
膨れ上がった数値に魂を込めて、
ヌルは、カミノに拳を叩き込む。
「どぅぶぉぇげぇええええええええっっ!!」
白目をむいて、大量の血を吐きだすカミノ。
拳を受け止めた腹部は爆散して、内臓も木っ端みじん。
けれど、中心は死んでいない。
中心が死んでいないのであれば、
「……ぶはぁっ!!」
即時、回復するカミノの肉体。
「はぁ、はぁ……」
粗い息を強制的に整えつつ、
ヌルをにらみつけて、
「お、俺が使っている永久禁止魔カード『あんたがどこさ』の効果と、デバッグコマンドで搭載したプラチナスペシャル『ギャグ漫画補正』と『無限蘇生』の効果はハンパない! お前程度じゃ、俺は殺せない! 一生、くらいついてやるからな! あえて、言っておく! 圧倒的主人公補正なんかなくても、俺は無敵で不死身なんだよ!」
「慌てて必死に、暴露を積んで補強しないと保てない程度の器。チートの精度がハンパじゃないから、簡単には完全消滅までもっていけないだろうが……ゴリ押ししていれば、いつかは壊せる。確実に」
そう言いながらも、
ヌルは、丁寧に、カミノとの距離を殺していく。
最善の間合いを求めて、互いに陣地を掌握していく。




