6話 零閃拳とは。
6話 零閃拳とは。
「貴様は愚かにも、俺のことをナメて、積ませてしまった! そのツケを払ってもらう!」
「……別にバカにしちゃいない。オリジナル・センエースも、似たような技を使ってきたしな。『面倒な前提を積む事で強化される技』が『非常に強力』であることは十分理解している。そして、『それらを理解している敵』と戦う時のために、『積んでいる途中で邪魔されること』を『能力発動の条件にしているパターン』があることも学習している」
だから、ヌルは、黙って、カミノ特戦隊のスペシャルポーズを見過ごした。
『普通に積まれる可能性』もあったが、確率50パーセントである以上、下手にヤブをつついて裏目を引くより、慎重に対応する方が最終的には『利がある』と判断した。
それに、『カミノの底を知っておきたい』という、今後を見据えた計算もあった。
相手の上限を知っておいた方が、のちのちの対策が容易になる。
ポケモ〇バトルにおいて、『相手が選出した3体』と『その型』は、出来るだけはやく認識しておいた方が有利。
多少、展開されたり、積まれたりすることよりも、情報を丸裸にする方がいい――という考え方もなくはない。
それが裏目に出ることもあるが、功を奏する場合もある。
今のヌルは感度ビンビンで研ぎ澄まされているし、
決して、マヌケな慢心もかまさない。
結果的に、裏目を引くことはあっても、
油断から足元をすくわれる、ということは、
可能な限りないように心がけている。
「数の暴力が厄介であることも、積み技の怖さも知っている……全部、ちゃんとわかっている……だから対処も出来る」
グっと、軽く膝を曲げて、いつでも躍動できる態勢をとると、
そのままの流れを崩さずに、
「零閃拳」
丁寧にグリムアーツを放つ。
本体めがけて一直線の一撃。
※零閃拳は、閃拳とは性質が異なる。『オリジナルセンエースの閃拳と比べて、自分の拳は積み重ねたものがゼロである』という、ヌルの自虐からくる蔑称なのだが、配下の連中は、蔑称であるとは認識していない。スタイルは正拳突きで、基本的なムーブは同じだが、細かい違いがある。通常の閃拳は、すべての性能が非常に高い、高水準でまとめられたコンボ始動技だが、零閃拳は、相手を吹っ飛ばす単発火力技。あえて吹っ飛ばす力を弱めてコンボにすることもあるが、閃拳のように、コンボ始動技用にカスタムされていないので、コンボ始動技として使うと、性能が非常に微妙なものとなってしまう。
――分身を展開された時の定石の一つ。
とにかく本体を最速で殺し切る。
カミノは、
『定石の応酬において、ヌルごときに負けるわけにはいかない』、
と、歯をむき出しにして、最善の一手を追い求める。
存在値では負けているが、カミノの武器は数値ではないので、別にいい。
盤上を完璧にコントロールできる支配力こそがカミノの真骨頂。
ヌルの『丁寧なゴリ押し』に対して、カミノは、柔よく剛を制しようと対応。
そんなカミノの対応に、ヌルは、さらなるゴリ押しで対応しようとする。




