5話 スペシャルファイティングポーズ。
5話 スペシャルファイティングポーズ。
「――究極超神化8 破道混沌/黒蛇邪気眼――」
最果ての変身――の『超簡易版』に到るヌル。バチバチと、血のような赤い電流が走り、体を包み込んでいる漆黒の鎧は、関節部分がドクドクと脈動している。そのヤバさに対抗するかのように、カミノの方も、切り札を切った。
「創世神化!!」
カミノが誇る固有神化。
とんでもない出力を誇る変身。
1000億年修行したセンエースを超えるほどの高み。
その存在値は、驚愕の1200兆。
むちゃくちゃな数字。
ありえない程の高み。
……だが、そんな高みを目の当たりにしたヌルの瞳に、恐怖の色は微塵もない。
当然の話。
簡易版とはいえ、まぎれもなく『究極超神化8』に届いたヌルの存在値は……普通に1京を超えているのだから。
ぶっちゃけた話、目を閉じていても勝てるぐらいの差が、両者の間には存在する。
「カミノ。お前の主人公補正は質が低いな。固有神化を使うと、『主人公特有の強靱な特殊バリア』」が解除されるゴミ仕様。そんなざまで、時間を稼げると思うか?」
そう言いながら、ヌルは、豪速で、カミノの背後を奪い取る。
そのまま、カミノの首裏に、『オーラをギュンギュンに込めた手刀』を叩き込む。
その一手で、カミノの精緻な気が散らされて、血の推動に妨害が加わる。
「ぐぅっ!」
一瞬、気絶しかけた。
下手をしたら、首を飛ばされていた。
そんな極限状態の中で、
カミノは奥歯をかみしめて、
「う、上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、F0000006――『オーラドール・アバターラ』――」
高性能のスペックを誇るアバターラを、全部で10体ほど召喚する。
カミノの特質……プラス・プライマル・プラチナスペシャル『原初のイタズラ』によって魔改造されたアバターラは、一体一体が、分身とは思えない精度を誇っていた。
オーラ量も、魔力量も、戦闘力も、すべてが秀逸。
そして、その秀逸なアバターラたちが、
順番に、
「カミノ・アバターラ1号!」
「カミノ・アバターラ2号!」
「カミノ・アバターラ3号!」
と、唐突に、謎のポーズをとりながら、誰も望んでいない自己紹介を開始する。
最後のカミノ・アバターラ10号が名乗りをあげた直後、
「「「「「「「「「「「みんな、そろって! カミノ特戦隊!!」」」」」」」」」」」
と、スペシャルファイティングポーズを決め散らかす。
そのふざけた様を、
ヌルは、一切、『シャレのきいていない目』で見つめている。
バカにすることも、笑うこともない。
ただ、純粋に警戒し、
適切な距離を取って観察。
そんなヌルに対して、カミノ本体は、
「俺たちにスペシャルファイティングポーズを取らせてしまったな、ヌル! こうなってしまえば終わりだ! 相手は死ぬ!」
と、勝利宣言をかましていく。
「スペシャルファイティングポーズが決まった時、俺達の存在値は跳ね上がる! 貴様は愚かにも、『なんかアホなことをしている』と俺のことをナメて、積ませてしまった! そのツケを払ってもらう!」
「……別にバカにしちゃいない。オリジナル・センエースも、似たような技を使ってきたしな。『面倒な前提を積む事で強化される技』が『非常に強力』であることは十分理解している。そして、『それらを理解している敵』と戦う時のために、『積んでいる途中で邪魔されること』を『能力発動の条件にしているパターン』があることも学習している」




