1話 最悪の欠陥品『センエース・ヌル』VS原初の創造主『カミノ・キメラ』。
1話 最悪の欠陥品『センエース・ヌル』VS原初の創造主『カミノ・キメラ』。
――ここは、『認知の領域外』の領域外。
『かなりいびつ』に『バグったソウルゲート』の中。
『この空間の中にいる者の視点』では、
外の時間が『ほぼ停止しているわけ』だが、
しかし、『バグ・ソウルゲートを利用している者』の『中』にある『世界』に関しては、
停滞せずに、並列で時が進んでいる。
つまり、カミノの中にある世界――『現在、センエースが閉じ込められている、時空桐作学園がある世界』に関しては、時が遅くなることなく、ちゃんと進んでいる。
……そんな前提を、互いに理解した上で、
『両者』は武をかわしあっていた。
元凶である『センエース・ヌル』と、
原初の創造主『カミノ・キメラ』。
★
――両者の殺し合いは、
ほとんど言葉もなく、
丁寧な探り合いから始まった。
初手はカミノの奇襲だった。
もともとカミノは、『バグ・ソウルゲートの外からヌルを封印する予定』だったのだが、
しかし、ヌルの膨張が想像以上でテンパったカミノは、
『このまま、ヌルの修行が完遂し、ヌルの究極超神化8が完成してしまったら、ガチで取り返しがつかなくなる』
と判断し、色々と考えた末に、
『とにかく、邪魔をして時間を稼ぐべき』と決断を下して、
ヌルが修行している空間にもぐりこんだ。
そして、そのまま、ヌルの死角に忍び寄り、最初の挨拶をいれた。
できれば、その初手で急所にきめて殺し切りたかったが、
まあ、しかし、そんな『夢見がちが過ぎる皮算用』が実現するわけがない。
カミノが奇襲をかけたタイミングで、すでに、ヌルは、途方もない時間を鍛錬にあてていた。
『世界の調停者ソル』も『世界』も含め、全てを飲み込んで膨れ上がった『センエース・ヌル』が、さらに、本質的な戦闘力を底上げしたので、当然、その大きさは膨大。
カミノの奇襲を鼻で笑ったヌルは、
そのまま、丁寧な迎撃を開始した。
ヌルの視点では、カミノなど、さほど大した敵ではない。
だが、油断はしない。
――『舞い散る閃光センエース』や『究極天才田中トウシ』という、膨大な光をも飲み込んでしまったヌルにとって、カミノごときは、ちょっと大きな小石に過ぎない。
下手に大きい分、気付かずに躓く事もないという、むしろ、優しい仕様。
――それだけ力量差がある相手でありながら、ヌルが、カミノに対して『丁寧な対応』を貫いているのは、『自身のスペック』が関係している。
『ヌル』は『敵に、油断を強制させる』という特異な資質を持つ。
ヌルを前にした者は、ヌルがどんな力を持っているか関係なく、ヌルのことを『あいつ程度なら、どうにかできる』とナメてしまう。
――プライマルメモリの元主人公の融合体『カミノ・キメラ』は、そんなヌルの特質を十全に理解している。
深く理解しているのにもかかわらず、しかし、ヌルに対して、『たぶん、いけんだろう』と、ナメたことを考えてしまう。
そんな自分を叱咤するカミノ。
いくら自分をいさめようとしても、しかし、ヌルの特性は、そんなカミノの精神的保護フィールドを貫通してくる。




